コンサートの記(220) 広上淳一指揮京都市交響楽団ほか 「ベートーヴェン 第九交響曲の夕べ」大阪公演2015
広上と京都市交響楽団による第九は京都でも公演があるが、その日はスケジュールが空いていないため、大阪で聴くことにした。京都コンサートホールよりザ・シンフォニーホールの方が響きが良いということもある。
独唱者は、石橋栄実(いしばし・えみ。ソプラノ)、福原寿美枝(メゾ・ソプラノ)、秋本靖仁(テノール)、三原剛(バリトン)。
第九の演奏の前に、ベートーヴェンの「アテネの廃墟」序曲の演奏がある。
フルート首席奏者の清水信貴、オーボエ首席の高山郁子、クラリネット首席の小谷口直子はいずれも降り番である。
「アテネの廃墟」序曲。広上と京響はかなり徹底したピリオド・アプローチによる演奏を展開。弦楽はビブラートを抑え、ボウイングもモダン・スタイルの演奏時とは異なる。
京響の響きに勢いがあり、溌剌とした演奏に仕上がった。
メインの交響曲第9番「合唱付き」。この曲でも「アテネの廃墟」序曲ほどではないが、ピリオド・アプローチを前面に出した演奏が行われる。音に立体感があり、弦も管も活きが良い。
テンポは平均的は演奏よりも速めであったが、繰り返し記号を忠実に履行したため、演奏時間は比較的長めとなった。
第1楽章のスケールの大きさ、第2楽章のあたかも宇宙を音楽で描いたかのような緻密にして奥の深さ、第3楽章の完熟した美しさなどを広上と京響は詳らかにしていく。
広上の指揮は今日も明快。広上の指揮スタイルは年を経るごとにオーソドックスなものへと近づきつつあるが、今日も第2楽章のティンパニ強打の場面で右手を高々と掲げてみたり、第4楽章ではジャンプを繰り返すなど、外連味も健在で見ていて楽しい。
第4楽章はオーケストラも雄弁であり、新音フロイデ合唱団も威力十分である。
今日はステージ下手横2階席で聴いていたので、合唱が強く聞こえすぎたが。広上の合唱指揮は拍や音型を指示するのではなく、音の強弱の指定が主となる。強弱自在であり、やはり広上は現役日本人の中では最高のベートーヴェン指揮者であろう(広上本人はベートーヴェンよりモーツァルトの方が好きなようだが)。
残念だったのはテノールの秋本靖仁。調子が悪かったのだと思うが声が小さく、他の独唱者に負け気味であった。
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