楽興の時(10) 「Kyo×Kyo Today Vol.6」
今回は、金管五重奏による演奏会。出演は、稲垣路子(トランペット、フリューゲルホルン)、西馬健史(にしうま・たけし。トランペット、ピッコロ・トランペット)、垣本昌芳(ホルン)、岡本哲(おかもと・てつ。トロンボーン)、武貞茂夫(たけさだ・しげお。テューバ)。
岡本哲がメンバー代表であり、MCも務める。
曲目は、シャイトの「戦いの組曲」より“戦いのガリヤード”、パーセルの「トランペット・ヴォランタリー」、酒井格(さかい・いたる)の「コン・マリンコニーア」、サン=サーンスの「ロマンス」、フィルモアの「シャウティン・ライザ・トロンボーン」、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」より“象”、スザートの「ルネッサンス舞曲集」より“4つのブラジル”、“ロンド(わが友”、“バス・ダンス(羊飼い)”、15分の休憩を挟んで、ギリスの「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー」、「ずいずいずっころばし」(菊池雅春編曲)、レナード・バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」
まず、シャイトの「戦いの組曲」より“戦いのガリヤード”が演奏された後で、岡本がマイクを手にしてトークを行う。前半のプログラムは1曲ごとに主役が変わるという趣向。パーセルの「トランペット・ヴォランタリー」では西馬健史のピッコロ・トランペットが、酒井格の「コン・マリンコニーア」では稲垣路子のフリューゲルホルンが、サン=サーンスの「ロマンス」では垣本昌芳のホルンが、フィルモアの「シャウティン・ライザ・トロンボーン」では曲名通り岡本哲のトロンボーンが、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」より“象”では武貞のチューバが主役となる。前半最後のスザートの「ルネッサンス舞曲」よりは全員が主役のアンサンブルとなる。
ちなみに新婚だそうだが、岡本によると奥さんはかなりの別嬪さんだそうで、「彼よりも奥さんの方が私は好きです」(岡本)だそうである。
岡本によるとトランペッターは顔を真っ赤にして吹くため、「それが良くないのか髪が抜ける。はげる人が多い」そうである。
稲垣路子は京響ブラス群の紅一点であるが、日本のプロオーケストラを見ても女性トランペッターはほとんどいないそうで、岡本によると「女性のホルニストなどはかなり増えてきていますが、トランペッターは彼女(稲垣)だけではないでしょうか。あと、テューバも海外のオーケストラでは女性が結構いますが、日本はいないと思います」ということだった。
なお、稲垣はメンバーの中で唯一、関西人ではない(名古屋生まれで愛知県立芸術大学卒)が、他のメンバーも関西人ではあるが京都出身者はゼロ。京都の音大(共学は京都市立芸術大学しかないが)や音楽高校出身者もいない(馬西は神戸出身で大阪音楽大学短期大学部卒。垣本は尼崎出身で大阪教育大学芸術専攻音楽コース卒。岡本は兵庫県川西市出身で相愛大学音楽学卒。武貞は神戸出身で大阪音楽大学卒)。
垣本昌芳は、岡本によると「演奏前のルーティンが不思議」だそうで、左足を曲げて斜めにかがむようになりながら吹くのだが、「あれでどうしていい音が出るようになるのかわからない」そうである。あた岡本によると「ホルンもはげる人が多い」そうで、「彼(垣本)も時間の問題」だそうである(垣本は「まだ」、と書いていいのかどうかはわからないが、はげてはいない)。
岡本哲は「自分で自分を紹介しようがない」と言うが、隣にいた武貞が代わりに岡本を紹介してくれる。武貞によると岡本は料理上手だそうで、奥さんが忙しい時などには代わりに料理を作ることもよくあるそうだ。岡本は「他人には『はげる』などとろくなことは言っていないのに褒めて頂いて嬉しい」と喜ぶ。
ちなみに岡本が後で語ったところによると、「料理をよくするのは単純に食費を浮かすため」で、「学生時代、彼女とデートをする前などにはお金がないので、20個ぐらい弁当を作って、1個500円で後輩などに売っていた」そうである。
武貞は、岡本によると「褒めて頂いたので、こちらも褒めないと。彼はご覧の通りガッチリとした体格をしておりますが、『気は優しくて力持ち』という言葉はその通りだなと納得させられる人」と述べた。
また武貞はいわゆる「鉄ちゃん」であり、精巧な電車模型を作るのが得意だという。
なお、「コン・マリンコニーア」の作曲者であり酒井格が客席に来ており、主役であるフリューゲルホルンを吹いた稲垣路子がそれに気がついて岡本に告げ、岡本が酒井を紹介した。岡本は稲垣に「よく気づいたね」と言っていたが、酒井が座っていたのは、稲垣のほぼ正面であったため気づくべくして気づいたのであろう。
「コン・マリンコニーア」は、酒井が中京圏でトランペット奏者として活躍する近藤万里子の誕生日にプレゼントした曲で、近藤の得意とするフリューゲルホルンをフィーチャーした作品である。ジャズの影響が窺える作品で、タイトルは「メランコリー」をイタリア語にしたものであるが、同時に近藤万里子のあだ名である「こんまり」に掛けられてもいる。
後半の1曲目、ギリスの「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー」は、黒人霊歌に基づくディキシーランド・ジャズのナンバー。スウィング感は余りないが、技術は達者である。
「ずいずいずっころばし」。菊池雅春による編曲が面白い。主旋律が様々な楽器に移動してフーガのようになる部分もある。
レナード・バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」。岡本がバーンスタインの交響曲の数を「4曲」と言ったり(実際は3曲である)、バーンスタインのミュージカルについて、「他には『キャンディード』ぐらいでしょうか」(「オン・ザ・タウン(映画化された時のタイトルは「踊る大紐育」)」などもある)といった風に知識面での物足りなさがあったが(音楽家は意外に音楽について知らないのである)、チャイコフスキーやベートーヴェンの交響曲についてデフォルメされた演奏に説得感があるということを語っていた。
岡本は、「演奏が終わりましたらば、出来れば盛大な拍手をお願いいたします。そうすると更に1曲加わるというシステムになっております。もう1曲練習してきましたので、演奏させて下さい」とユーモアを交えたトークを行った。
オーケストラでも「シンフォニック・ダンス」がよく演奏されるということもあり、堂に入った演奏が展開された(なお、稲垣路子はこの曲ではトランペットとフリューゲルホルンを併用)。
アンコールは、ウーバーの「ある日の草競馬」。トランペットによる競馬のファンファーレに始まり、フォスターの「草競馬」、ヨハン・シュトラウスⅡ世の「こうもり」よりワルツ、アメリカ民謡「おうまはみんな」などの旋律を取り入れた賑やかな曲である。西馬のトランペットが馬のいななきを模すなど楽しい作品と演奏であった。
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