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2016年11月23日 (水)

コンサートの記(261) 広上淳一指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2016 「オーケストラ・ミステリー」第3回「名曲の秘密~とっておきの名曲ミステリー~」

2016年11月13日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、「京都市交響楽団オーケストラ・ディスカバリー ~こどものためのオーケストラ入門~ オーケストラ・ミステリー」第3回「名曲の秘密      ~とっておきの名曲ミステリー~」を聴く。今日の指揮者は京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一。ナビゲーターはロザンの二人。

「こどものためのオーケストラ入門」というサブタイトルが付いているが、「子供連れ歓迎」という風な意味であり、実際は大人だけで来ている人の方が多い。曲目自体がそもそも子供向けではない。


曲目は、前半が、ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ「美しく青きドナウ」、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」(ヴァイオリン独奏:三浦文彰)、ムソルグスキー作曲(ラヴェル編曲)の組曲「展覧会の絵」から「キエフの大きな門(キエフの大門)」、後半がドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」から第2楽章とチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」から第4楽章。


今日のコンサートマスターは渡邊穣。フォアシュピーラーに尾﨑平。木管楽器の首席奏者は今日は全編に出演。フルートのみは現在も首席不在である。トランペットは、前半が西馬健史と稲垣路子、後半がハラルド・ナエス(首席トランペット奏者)と早坂宏明であった。


まず、ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ「美しく青きドナウ」の演奏がある。広上は今日は老眼鏡を掛けて、総譜を見ながらの指揮である。
主部に入ってからはテンポを落として優雅さを強調する演奏。後半はテンポをしっかり刻んで更に雅やかになる。

演奏が終わってから、広上がマイクを手にしてトークとなる。広上は、「昨日は浜松で、この『オーケストラ・ディスカバリー』をやったのですが、私、色々話過ぎて自己紹介をするのを忘れていまして、ロザンの二人に紹介して頂きました。今日は忘れないうちに言います。指揮、広上淳一です」と自己紹介する。そしてロザンの二人が登場。宇治原史規は広上に、「今日、ちゃんと名前言えましたね」と言う。
広上は、「宇治原ちゃん、菅さん。この曲聴いたことある?」と聞き、宇治原は「あります」と返すが、菅広文は「昨日、聴きました」とボケる。広上は、「お正月の番組はどうしてるの?」と聞き、宇治原が「お正月の番組は事前に収録しているので、元日は普通にテレビ見てたりします」答える。広上は、「この曲は、ヨハン・シュトラウスのⅡ世、お父さんが同じ、ヨハン・シュトラウスという名前だったのでⅡ世、私の父親が広上淳一という名前だったら私は広上淳一Ⅱ世ということになるわけですが、ヨハン・シュトラウスの子供の方が作曲しまして、元日に衛星中継でやるニューイヤーコンサートのアンコールで必ず演奏されます。ただ、実は、この曲は最初はおじさん達の合唱団に書かれた曲だったんです」、宇治原「僕らはウィーン少年合唱団のメンバーが歌っているイメージがありますが」、広上「はい、ただ、依頼したのは平均年齢が50歳から70歳ぐらいのおじさん達でして、ヨハン・シュトラウスⅡ世も作曲に余り乗り気じゃなかったそうです。『若い女の子からじゃないのか。嫌だな』と思ったのかどうかはわかりませんが、おじさん合唱団のメンバーとメロディーを口ずさみながら嫌々作曲したそうです」、宇治原「あの曲が嫌々作曲されたわけですか」、広上「歌詞も、幕末に『ええじゃないか』というのがありましたが、あんな感じで、ステージではいえないような下品な歌詞だったそうです。オーストリアが戦争に負けたので、無理矢理盛り上げようというので」
広上は、出だしの歌詞を関西弁で、「どうでもええやん、どうでもええやん、わしらもうちょい頑張ろうやないか」とメロディーなしで口にする。
ちなみに、広上は自身の身長について、「164cmです」と語ったことがあるが、おそらくそれは若い頃の数字であって、最近は身長を測っていないのだと思われる。今日も、公称162cmの菅ちゃんよりも広上が小柄であることは見てわかった。


2曲目、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。ソリストの三浦文彰が現れると、ロザンの二人は口を揃えて、「イケメンですね」と言うが、菅ちゃんは、「僕と同じぐらい」とボケる。宇治原に突っ込まれるが、菅ちゃんは、「宇治原とは比較にならない」と続ける。
広上が、「今日、8時からの『真田丸』のソリスト」と紹介すると、菅ちゃんは、「皆さん、分かりますか? あの『パッパッパ』ってやつ」と言い、宇治原に、「このステージでよくそんないい加減な紹介できるな」と突っ込まれる。

三浦はまずパガニーニの曲を演奏する。メロディーを奏でながら左手でピッチカートの旋律を奏でるという見るからに難しそうな曲である。ラストではピッチカートの連続になるのだが、その間、広上はずっと頭を左右に振っておどけていた。

菅ちゃんが例によって、「楽器はおいくらぐらい?」と聞くので、三浦は乗り気ではなかったが、「億は行くと思います。自分のものではないので詳しくはわからないのですが」と答える。広上が、「名器は財団などが所有していて、『この楽器は三浦さんだったら貸すよ』というので、貸与されることが多いです」と補足する。
菅ちゃん「この楽器で煙草が何箱買えますか?」
三浦・広上「…………」
宇治原「なんで煙草やねん!」

三浦は演奏の準備のためにいったん退場。広上がピアニカを取り出して、「ツィゴイネルワイゼン」の出だしは、ソドレミなのですが、ソドレミで始まる曲はヒット曲が多い」というので、宇治原に楽譜を渡して、「千の風になって」、「この道」、「ドラゴンクエスト」のテーマ(ロザンの二人は、「ドラクエ?」と驚いていた)、SMAPの曲(曲名はわからず)、中島みゆきの「地上の星」(二度ほど間違える)の出だしを演奏する。
菅ちゃんが、「ピアニカってそんなにいきなり吹き始めるものなんですか?」とボケるが、広上は「柔らかい音色だから、本番前に吹くのに良い」と語る。「手元が見えないので楽譜を見ながら吹くので良い」と続け、菅ちゃんが、「あ、手が見えないんだ。それでさっき間違えたんですね」返し、広上は「欠点は間違えやすい」と述べる。

「ツィゴイネルワイゼン」本番。三浦は高音は磨き抜かれた輝かしい音を出すが、全般としては年に似合わず、渋い音楽を奏でる。
広上は途中、体を左右に振るだけで指揮し続けるなど、相変わらずユーモラスである。

三浦君は、後半は客席でコンサート聴いていた。


ムソルグスキー作曲、ラヴェル編曲の組曲「展覧会の絵」から「キエフの大門」。
広上は、「『展覧会の絵』というのは、実は元々はピアノ曲でして、ムソルグスキー先生本人も、オーケストラで華々しく演奏されるとは予想していませんでした」、「作曲から50年ほど経ってからラヴェル先生がオーケストラ用に編曲しまして、それでムソルグスキー先生のピアノ曲も有名になった」、「ムソルグスキー先生というのは、元々、陸軍士官学校を出まして、軍人をやっていました。音楽は趣味で勉強していました。その後、今でいう官吏、国家公務員になりまして、休みの日に作曲をしていました」、「『展覧会の絵』は友人の亡くなった画家を偲んで書かれたものです」と説明する。
宇治原「言ってみれば、官僚が休みの日に作曲したのが『展覧会の絵』だと」、広上「そういうことです。ムソルグスキー先生はオーケストラによる『展覧会の絵』は聴いたことがないんです」、菅「作曲者が聴いたことがない音楽を今から聴けると」、広上「はい。ムソルグスキー先生は、オペラも作曲していまして、『ボリス・ゴドノフ』、それから『ダッタン人の踊り』なども作曲しています」(おーい、広上さん、「ダッタン人の踊り」を作曲したのは、ムソルグスキーじゃなくてボロディンだぞ)

ということで、組曲「展覧会の絵」より「キエフの大門」の演奏。通常は前曲である「バーバー・ヤーガ」が盛り上がってからアタッカで入るのだが、前曲の部分は演奏せずに「キエフの大門」の冒頭から入る。ということで多少唐突な印象は受ける。
スケール雄大で、輝かしい演奏。今日もステージを擂り鉢状にしているが、チューブラーベルやグロッケンシュピールの音などは天井から降り注いでくるようで、理想的な音響である。


後半。広上とロザンの二人が揃って登場。宇治原が、「『キエフの大門』でしたね」と言い、広上は、「ごめんなさい、『展覧会の絵』の話ばかりして、肝心の曲名を言うのを忘れていました」と続ける。菅ちゃんが、「『展覧会の絵』は組曲ですね」と言い、広上は、「そうです。10曲ぐらいからなる組曲でして、『キエフの大門』は最後の曲です」と答える。
宇治原「でもお客さんも全曲やるとは思ってなかったでしょう?」
広上「いや、思っていた人もいたかも知れません。『《展覧会の絵》全曲やるの? 40分ぐらい掛かる』って。別にやってもいいのですが」
ということで(?)、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」から第2楽章。
広上「宇治原ちゃん、この曲はご存じ?」
宇治原「学校から帰る時の音楽ですね」
広上「そう、『家路』という曲がありまして、私も最初は、この曲は『家路』というタイトルだと思っていたのですが、ドヴォルザーク、彼はチェコの作曲家なのですが、晩年に2年ほどアメリカで音楽大学の校長先生をしていた時に、祖国であるチェコのことを思って作曲したのがこの曲です」
宇治原「学校の音楽の教科書にも載ってますね」
広上「そう、『家路』というタイトルがピッタリの。故郷を思う気持ちは万国共通ということだと思います」
宇治原「この『新世界から』の新世界というのはアメリカのことですね。アメリカとチェコの旋律を取り入れつつ故郷を思うという」
広上「そうです。アメリカでもチェコでも日本でも同じイメージが浮かぶ。私などは夕方に、カレーライスの匂いがしたり、おでんの匂いがしたり、豆腐屋さんの、チャルメラ、じゃないか。プーと音のする。そういうイメージです。宇治原ちゃんは?」
宇治原「僕は、小学校が山の上にあったので、放課後、坂を下るイメージが」
広上「夕日が差して?」
宇治原「そうです」
広上「菅ちゃんは?」
菅「僕は、団地に住んでいたので、団地のエレベーターに乗っている時のイメージが」
広上「え? エレベーターあったの? 当時? じゃあマンションだ。私は団地族だったもので、団地というと4階建てぐらいで階段のみのイメージが」
菅「うちは7階建ての6階でした」
広上「6階? じゃあマンションだ」
宇治原「もうええわ! 団地・マンション論争いらん!」

広上は速めのテンポを採用。スッキリとした出来である。ノスタルジアよりも音の美しさが印象に残る。


チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」より第4楽想。
宇治原は、チャイコフスキーについて、「バレエ音楽を沢山書いているイメージがあります」と述べる。広上は、「『くるみ割り人形』、それから『白鳥の湖』などを作曲しています。『くるみ割り人形』は(クリスマスが舞台なので)、ヨーロッパでは毎年、12月に必ず上演されます。バレエ音楽が有名なので明るくて元気なイメージがあるかも知れませんが、これから演奏する曲は重いです。初演から9日後に作曲者が死去するという」、宇治原「それは本当にミステリーですね」

広上はチャイコフスキーの死因について、「色々な説があって、今、研究が進んでいることです。チャイコフスキーの日記には、『死を意識する』という意味深なことが書かれています。それから、『自分は同性愛者なので、王朝から追われているかも知れない』と書かれていたりします」と述べる。菅ちゃんが「追われている?」と聞くと、広上「宇治原ちゃん、(高校時代の)専攻は世界史?」、宇治原「僕は日本史です」、広上「私も余り詳しくないのですが」というやり取りがあった後で、「当時、同性愛は重い罪で、死に値するかも知れないということです」と説明する。

しかし、子供に、「どうせいあいってなあに?」と聞かれても返答に困るな。

広上は楽曲について、「最後にコントラバスが、宇治原ちゃんの心臓のように、トントンと鳴って止まる」、宇治原「広上さん、縁起悪いですよ」、「あ、間違えました。トントンじゃなくてトクトクでした」というどちらでもいいような会話があった後で演奏スタート。

清澄な弦が印象的な演奏である。この楽曲も過去を回想するような趣があるのだが、それはとても良く出ている。ゲネラル・パウゼのところで拍手をしたお客さんが2名ほどいたのが謎だったが。
盛り上げ方も上手く、全曲の演奏が聴きたくなる。
今日は、ドイツ式の現代配置での演奏だったので、冒頭の旋律を第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交互に弾くというステレオプレゼンツは分からなかった。

演奏終了後、菅ちゃんは自分が演奏の立役者のように右手を挙げて登場。宇治原に仕草で「お前ちゃう」と突っ込まれる。

宇治原が、「重かったのでアンコールを。ブラームスのハンガリー舞曲第5番だそうで」と言い、広上がブラームスの「ハンガリー舞曲」について説明する。「この曲は、ブラームスがお金を稼ぐために書いたの(文字だけだとお姉口調に感じられるが実際はそういう響きではない)。連弾のための曲として書いて、ドンドン売れたという」
宇治原「当時は、CDの代わりに楽譜が売れるのがベストセラーだったと」、広上「そういうこと」

ハンガリー舞曲第5番。広上は出だしは平均的なテンポで演奏するが、中間部ラストで速度をぐっと落とす。また弦楽は一音ごとに音を切って演奏する。
再現部は出だしはかなり遅く、その後、急速にテンポアップするということが繰り返される。舞曲ということが強調された面白い演奏であった。

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