コンサートの記(265) 京響プレミアム「岸田繁 交響曲第一番初演」
立命館大学出身のバンド、くるりの岸田繁がクラシックの楽曲に挑戦した演目である。岸田はかなりのクラシック通だそうだ。
指揮は京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一。広上はピアニカ独奏も行う。
曲目は、「Quruliの主題による狂詩曲」と、交響曲第一番。交響曲第一番のオーケストレーションは三浦秀秋によって行われている。
今日のコンサートマスターは渡邊穣。フォアシュピーラーに尾﨑平。「Quruliの主題による狂詩曲」は、室内オーケストラを少し大きくした規模で演奏され、管楽器はホルンやフルートを除いて単管編成。オーボエ:髙山郁子、クラリネット:小谷口直子、トランペット:稲垣路子、トロンボーン:岡本哲である。
今日は2階席正面での鑑賞。ロームシアター京都メインホールの2階正面席は傾斜も緩やかでステージが見やすい。弦楽器の音が直接飛んでくる角度にあるため、今日は京都市交響楽団の磨き抜かれた弦の音を堪能することが出来た。残響こそ短いが(多分、1秒もない)、音の通りは良い。
「Quruliの主題による狂詩曲」。岸田は広上と共に登場。曲のラストでは歌が入るため、ステージの中央に立つのだが、それまでは第一ヴァイオリンの最後部の後ろの席に腰掛けて演奏を聴く。
ポピュラーが元とはいえ、そこはクラシック通の岸田。グリーグの「ホルベアの時代から」や、マーラーの交響曲第1番「巨人」第2楽章を思わせるような場面が出てくる。
ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、ミニマル・ミュージック(スティーヴ・ライヒに一番近いかな?)、シャンソン、黛敏郎などの影響が感じられ、アカデミックな作風という印象を受ける。岸田がクラシック音楽にかなり精通していることがわかる。
舞台上方にデッカツリーが下がり、舞台上にもマイクが乱立、というほどではないが各所に配置されているため、ライブ収録が行われることがわかる。岸田繁の交響曲第一番は録音されてリリースされることがわかっているため、そのためのレコーディングだと思われるが、放送用、記録用の可能性があるためレセプショニストさんに確認する。「記録用」とのことだった。明後日、東京オペラシティコンサートホール“タケミツ メモリアル”でも同一演目の演奏会が行われるため、出来いかんによっては京都での録音が採用されない可能性もある。ただ今日も素晴らしい演奏が展開されたため、不採用ということはないと思われる。
演奏終了後、岸田がステージ上に呼ばれ、広上に促されて感想を述べる。「いっぱいいっぱいで感想を述べる余裕がないのですが、広上淳一先生と京都市交響楽団によって素晴らしい演奏になりました。ありがとうございます」「沢山の方にお聴き頂き、嬉しく思います」「私も小学生の頃から京都市交響楽団の演奏会を見ていたのですが、京都市の皆さん、京都市に京都市交響楽団があって本当に良かったですね」というスピーチを行った。
アンコールは2曲。2曲目は先程紹介したが、1曲目は、岸田の「管弦楽のためのシチリア風舞曲」。この曲は、岸田繁自身がオーケストレーションを行っているようである。「グリーンスリーブス」に少し似た旋律が登場するが意識したものではないと思われる。この曲は会場限定でCDが700円で発売されていた。
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