2017年2月19日 新京極のMOVIX京都にて
MOVIX京都で午後5時からヒッチコック9「リング」を観る。ヒッチコックが唯一、自身でオリジナル原案とオリジナル脚本の両方を手掛けた映画である。
ヒッチコック9は、アルフレッド・ヒッチコックがイギリス時代に監督したサイレント映画全9作を最新修正デジタルリマスターによって上映するという企画。京都での上映が昨日から始まっており、この京都での上映がジャパン・プレミアになるという(京都のミュージカル劇団である劇団とっても便利代表格で日本チャップリン協会会長の大野裕之がディレクターとして協力しているため)。
ヒッチコックのサイレント映画というと、サスペンス映画である「下宿人」が有名だが、それ以外の作品は余り知られてはおらず、観る機会にも乏しい。
今回上演される「リング」は、「下宿人」の翌年である1927年に制作されたもの。日本の年号に直すと昭和2年。世界初のトーキー映画である「ジャズ・シンガー」がアメリカで公開された年でもある。
新たに作曲された映画音楽付き。時折出る英語の字幕は弁士というほどではないが、大野裕之がその日本語訳を読み上げる。
ヒッチコック映画というと、サスペンス・ミステリーのイメージがあるが、「リング」は恋愛を描いた映画である。日本ではこれまで上映されたことはないため、今日が日本初上映となる。
舞台はロンドン。遊園地では、様々なアトラクションがあるが(その中には黒人の道化をもてあそぶという人種差別そのもののコーナーもある)、ロブ・コービー(イアン・ハンター)はボクシングの興業小屋の切符売り場の女性・メイベル(リリアン・ホール=デイヴィス)を見初める。ボクシング小屋にはワン・ラウンド・ジャックという通称を持つ看板ボクサー、ジャック・サンダー(カール・ブリッソン)がいて、メイベルとジャックは恋人である。ロブは「どんな相手でもワンラウンドで倒す」と豪語しているジャックに勝負を挑むことになる。ボクシング小屋では、素人がボクサーに挑めるのだが、屈強に見える海兵も瞬く間にKOされてしまうなど、ボクサーは手強い。だが、ロブはあっさりとジャックに勝利。それもそのはず、ロブは実はプロボクシングのチャンピオンだったのだ。ファイトマネーでロブはメイベルに腕輪を贈る。そしてロブからのキスもメイベルは受け入れた。だがメイベルはやはり約束通りジャックと結婚。結婚式にはロブも出席する。
ロブに見込まれたジャックは次のボクシングの試合で勝利し、ロブのスパーリングの相手に採用される。だが、自分と結婚しているにも関わらずロブと睦まじそうにしているメイベルを見てジャックは嫉妬を覚えた。
その後も対戦を重ねてようやくプロボクサーの仲間入りを話したジャック。ロブのいる頂点までは遠かったが、徐々に頭角を現し……。
サイレント映画であり、元々音がないという前提で撮られた映画である。そのため、出演者達の演技は表情や仕草が大仰になりがちで、これは音がない分をなんとか他の部分で伝わりやすいようにと工夫した結果であると思われる。
ストーリー的には比較的単純な恋愛ものなのであるが、ラストに向かって行く過程は予想は出来ていても引き込まれるものがある。
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