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2017年3月21日 (火)

連続テレビドラマ「カルテット」のためのメモ集成

2017年1月30日
録画してまだ見ていなかったTBS系連続ドラマ「カルテット」第1話を見てみる。坂元裕二の脚本だけあって安定感がある。出演は、松たか子、松田龍平、高橋一生、満島ひかり、イッセー尾形、八木亜希子、吉岡里帆、菊池亜希子、もたいまさこ他。

小さな声で話すヴァイオリニストの巻真紀(まき・まきという洒落のような名前。演じるのは松たか子)を巡るミステリー仕立ての作品である。私も小さな声でしか話せないのだが、理由は色々ある。そのことが鍵になるのかどうかは第1話ではまだわからない。

音楽家達の話だが、状況はシビアだ。プロとしての演奏経験があるのは真紀だけ。後は、おそらく縁故で入った会社員、美容院のバイトリーダー(美容師免許なし)、フリーの売れない音楽家など、夢からは遠い状況にある人ばかりである。
松田龍平演じる別府司の祖父が偉大な指揮者ということで、軽井沢にある別府家の別荘で話は進むのだが、ハイソな環境で現実は中和されているものの苦しさは皆自覚している。
 

2017年2月1日
録画しておいた連続ドラマ「カルテット」の第2話を見てみる。言葉の綾や行動の背景を探る心理劇である。面白く見ることが出来るのだが、そもそも心理劇というものはある程度の知的レベルがないと楽しめないものである。子供や精神が子供の人が面白いと思うのかどうかはわからない。
 

2017年2月10日
録画しておいた連続ドラマ「カルテット」の第3話を見てみる。世吹(旧姓:綿来)すずめ(満島ひかり)の父親(作家で明治学院大学教授の高橋源一郎が演じている)の死が迫っている。父親が入院しているのは千葉市立青葉病院(実在する)。すずめの過去の傷が明らかになっていく。
今のところ、ほぼ全員が丁寧語で会話をしており、心の垣根の高さが感じられる。悪女と思われる人が何人も出てくるのだが、吉岡里帆演じる有朱(子供の頃のあだ名は「淀君」だったという)が一番の悪女のようでもある。
 

2017年2月17日
録画しておいた連続ドラマ「カルテット」の第4話と第5話を見る。夢見る負け組達の話路線。世相を反映していてリアルだ。ただ、登場人物達の微妙なズレが笑いをも生んでいる。
第4話のラストで吉岡里帆演じる有朱(ありす)が本格的に悪女の本性を露わにし始める。子供の頃から女王様気質で、元地下アイドルながら今は料理店の店員というストレスがたまりそうな設定が伏線としてちゃんと張られている。吉岡里帆は好演だが、女優としては駆け出しだけに、「目が笑ってない」といわれる女性を演じるのに十分かというと、現時点ではそうではないだろう。目の表情に関しては松たか子の方がずっと上手い。なんといっても松たか子は歴史に残る女優だろうし。
松たか子演じる巻真紀の失踪した夫について、真樹から有朱が聞き出そうとする場面。吉岡里帆は良い演技を見せたが、それを上回ったのが綿来すずめを演じる満島ひかり。満島の演技はそう簡単に出来る種類のものではないと思う。
 

2017年2月21日
「カルテット」第6話を見る。真紀(松たか子)の夫である巻幹生(宮藤官九郎)が本格的に登場。これまで真紀の夫に関する情報は伏せられていたため、前回、それを演じるのが宮藤官九郎だと分かったときは、「絶妙のキャスティング!」などと話題になった。巻と真紀の結婚生活の回想が今回のメインとなる。仕事を通して真紀と知り合った巻は、巻について、音楽をやっていて上品で今まで会ったことのないタイプだと思ったのだが、いざ結婚してみるとヴァイオリンは止めてしまい、映画には疎く、自分がプレゼントした詩集にはなんの興味も示さないことで「彼女も普通の人だったんだ」と失望を深めていく。一方で真紀は平凡な主婦になれたことに喜びを見いだしていた。完全なすれ違いによる破局パターンである。真紀ははなぜ別れることになったのかについての自覚はないが、巻は「愛しているけど好きじゃない」「もう好きじゃなくなった」と人にハッキリと語ることが出来る。巻は元カノに「よっぽど価値観が合うか器が大きくないと結婚なんて出来ないでしょ」と言われる。

ただこの巻、予想以上の食わせ物であったことから、ストーリーが大きく変わっていきそうである。
2017年3月1日
録画しておいた「カルテット」第7話を見る。なぜ有朱(吉岡里帆)が真紀(松たか子)のヴァイオリンを盗み出そうとしたのかが判明するが、単純に売って金儲けしようという理由だったことがわかる。
妻のヴァイオリンを持ち出そうとしている有朱を見かけた巻幹生(宮藤官九郎)と揉み合いになり、ベランダから墜落してしまう有朱。人を殺してしまったと動揺する巻。
妻の真紀と久しぶりに出会った巻は、有朱と共にダムから飛び降りて死ぬ計画を打ち明ける。だが有朱は生きていて……。

客観的に見るとかなり深刻な状況なのだが、それでもみなどこかズレているためくすりと笑える上手い仕掛けになっている。
 
 

 

2017年3月14日
連続ドラマ「カルテット」第9話。「名前は違っても一緒」という内容の元ネタは「ロミオとジュリエット」だと思われる。そういえば、出演している宮藤官九郎も、自身が脚本を手掛けた映画「GO」の冒頭に当該のセリフを引用していたのだった。

松たか子には女優として致命的な欠陥が二つあった。一つは映像写りが悪いこと(舞台で見ると超美人なのに、映像では余りパッとしなくなってしまう)これはもうどうしようもない。もう一つは泣き顔が汚いことだったが、こちらは克服したようだ。
 
 

2017年3月21日
連続ドラマ「カルテット」第10話(最終回)。戸籍を買って他人になりすましていた真紀(松たか子)は不起訴処分になるが、ヴァイオリンの道を止めようとしていた。週刊誌は真紀のことを「疑惑の美人ヴァイオリニスト」と書き立てる。
カルテット・ドーナツホールの3人のうち唯一の会社員だった別府司(松田龍平)は会社を辞め、世吹すずめ(満島ひかり)はアルバイトとして働いていた不動産が店を畳むことになったため、アルバイトをすると同時に資格の勉強をしていた。家森諭高(高橋一生)は「ノクターン」改め「割烹のくた庵」で休みなしで働いている。
第9話から1年が経ち、3人は真紀を見つけ出して、カルテット・ドーナツホールが再結成される。3人は音楽を趣味として続ける道を選ぼうとしていたが、真紀は軽井沢大賀ホールでコンサートをしようと持ちかけ……。

いらないといえば音楽自体がいらないものなのかも知れない。音楽がなくても世界は回る。それは添え物でしかないパセリのようなものなのかも知れないし、音楽自体が煙突から出る煙なのかも知れない。
しかし、あることとないことで変わることは確実にある。そもそも「必要なものでしか世界は構成されてはならない」と誰が決めたのか?
彼らは良くも悪くも変わらない。音楽の腕が上がるでもないし、つまらないやり取りばかりしている。でも、それでいいじゃないか。
人の生き方や世界のあり方の正解を示せるほど偉い人なんて世界のどこにいるのかという話である。

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