コンサートの記(296) 下野竜也指揮広島交響楽団第369回定期演奏会大阪公演「下野竜也音楽総監督就任披露 シーズン開幕 下野×広響《始動》」
この4月から広島交響楽団(広響)の音楽総監督に下野竜也が就任したことを記念して行われる大阪公演。広島交響楽団が大阪で演奏会を行うのは実に24年ぶりになるという。
音楽総監督というポストは、ドイツのオペラ劇場などではよく用いられるが、日本のオーケストラに設けられるのはかなり珍しいことである。就任時から音楽総監督というケースはあるいは初めてかも知れず、下野に対する広響の期待が窺える。
曲目は、ブルックナーの交響曲第8番(ハース版)1曲勝負。
以前は、記念演奏会のプログラムというと、ベートーヴェンの第九が定番であったが、最近ではマーラーの交響曲第2番「復活」や、ブルックナーの交響曲第8番がプログラミングされることも多い。大植英次が大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督としてのラストのコンサートで取り上げたのもブルックナーの交響曲第8番であった。
ヴァイオリン両翼の古典配置での演奏。コントラバスがステージの一番後ろに横一列に並ぶタイプの配置である。ティンパニは舞台上手に陣取る。
今日のコンサートマスターは佐久間聡一。フォアシュピーラーは日本センチュリー交響楽団のアシスタントコンサートミストレスから広響のコンサートミストレスに転身した蔵川瑠美。
広島出身で現在は読売日本交響楽団のコンサートマスターを務める長原幸太が第2ヴァイオリンのトップとして特別に参加していた。コンサートマスター以外のポジションに長原幸太が座ることは最近では珍しい。
今日は3階席は使用していないようで、ポディウムに陣取る人も少なめ。1階席はほぼ満席である。私は今日は1階席の上手寄り後方の席で聴く。
冒頭は少しずれる。ザ・シンフォニーホールでの演奏にしては響きが豊かでないように感じられるが、演奏し慣れていない故なのであろう。第1楽章では弦がやや薄く感じられ、管はパワーはあるが音色がやや硬い。
第2楽章にはアタッカで入る。弦の音は少しずつ豊かになってきたように感じられるが、下野の悪い癖で、金管を思いっきり吹かせるため、ややうるさく感じられる。
第3楽章では弦が健闘するも、音色がやや熱すぎで美観を欠く場面もあった。
第4楽章は、迫力はあったが、やはり木管も金管も音色が硬い。広島にはクラシック音楽専用のホールはなく、広響の本拠地も多目的ホールであるため、ザ・シンフォニーホールでの演奏に適応出来なかったのだろう。
また、下野の実力をもってしても、ブルックナーの交響曲第8番をきちんと聴かせられるようになるにはまだ早いということなのだと思われる。下野は今年48歳。一般に指揮者として一人前と認められるのは50歳になってからだといわれている。
下野と広響のコンビの初顔合わせとしては成功だと思えるが、演奏会としての出来は少なくとも「万全」とはいかなかったように思う。
下野は、喝采に答え、最後はブルックナーの交響曲第8番の総譜にお辞儀をしてから、「広島にも来て下さい」と客席に言って、コンサートはお開きとなった。
広島交響楽団は、今年の10月にもハンヌ・リントゥの指揮で大阪公演を行う予定である。
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