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2017年6月18日 (日)

観劇感想精選(219) ミュージカル「王家の紋章」2017大阪

2017年5月24日 梅田芸術劇場メインホールにて観劇
 

午後6時から、梅田芸術劇場メインホールで、ミュージカル「王家の紋章」を観る。細川智栄子あんど芙~みんによる同名少女アニメのミュージカル化。原作マンガは1976年に連載開始で、現在も連載中という、41年の歴史を誇るロングヒット作である。エジプトで考古学を学ぶアメリカ人の少女・キャロルと古代エジプトの王・メンフィスとのロマンが描かれる。
脚本・作詞・演出は、荻田浩一。作曲・編曲は、シルヴェスター・リーヴァイ。音楽監督:鎮西めぐみ。東宝の製作。
出演は、浦井健治、新妻聖子、平方元基(ひらかた・げんき)、伊礼彼方(いれい・かなた)、愛加あゆ、出雲綾、矢田悠祐、木暮真一郎、濱田めぐみ、山口祐一郎ほか。

古代エジプトが舞台の上に、日本人役の人がいないということもあり、説明ゼリフが多用される。現代日本と地続きの作品ではないので、説明がないとわからないのだ(例えば姉弟で夫婦というのは古代エジプト王朝ではごくごく当たり前だが、現代日本ではありえないので、王の姉であるアイシスがメンフィス王に恋しているということは第三者によって仄めかされる)。傍白や、録音を用いた心情吐露のセリフも比較的多めである。


まず古代エジプト人達によるデモストレーションがあり、本編に入る。考古学を学ぶためにエジプトに留学しているアメリカ人少女のキャロル(新妻聖子)が、兄のライアン(伊礼彼方)と電話をしている。ライアンはリード・コンツェルンの総帥であり、キャロルがエジプトに留学出来ているのもリード家に生まれたおかげだ。キャロルは新たに発掘されたメンフィス王の墓の見学が叶ったことをライアンに告げる。
だが、メンフィス王の棺内に備えられていた花束を見たキャロルは、「古代のロマンス!」とばかりにその花束に手を伸ばし、それが王墓を犯した罪と古代エジプト人達(アイシスら)の霊に見なされ、断罪のために古代にタイムスリップさせられてしまう。妹の失踪を知ったライアンは動揺する。

古代エジプト。メンフィス王(浦井健治)がまさに即位したところだ。メンフィスはエジプト全体の王と上エジプトの王を兼ね、下エジプトを治めるのはメンフィスの異母姉のアイシス(濱田めぐみ)。彼女は祭礼の長でもある。エジプトの宰相を務めるのは賢人・イムホテプ(山口祐一郎)。
ヒッタイトからの来賓としてメンフィスの即位式に参加したミタムン(愛加あゆ)は、ヒッタイトの王女である自分がメンフィスと結ばれることで、ヒッタイトが繁栄することを夢見ている。

ナイルの川岸で失神しているところを奴隷の青年に保護されたキャロルは、金髪であるため異国人であると見抜かれる。異国人であるとわかったら処罰されるかも知れないということで、マントをかぶって出歩くようキャロルは注意される。
だが、やがてメンフィス王と巡り会ったキャロルは、古代エジプト人がまだ持っていない知識(水の濾過や鉄の知識、解毒の方法)などを駆使し、伝説として伝わるナイルの神が生んだ金色に輝く少女「ナイルの少女」として崇められるようになる。しかし、キャロルは歴史を変えてしまうことに罪悪感を抱いており……。

世界史上、初めて鉄器の鋳造に成功したといわれるヒッタイトと、エジプトの闘争のドラマでもある。キャロルは己一人が原因となって戦争が起ころうとしていることにも苦しむ。

「俺様」を絵に描いたようなメンフィスと、現代からタイムスリップしたキャロルの時代を超えたロマンスであり、客席には当然ながら女性の姿が多い。私もいくらシルヴェスター・リーヴァイが作曲した作品だからといっても、新妻聖子が出演していなかったら観に行ってはいない。ちなみにキャロルはWキャストで、新妻聖子の他に元AKB48の宮澤佐江が出演している。宮澤佐江のキャロルだったら、観に行っていないはずである。

新妻聖子もそこそこいい年なのであるが、喋り方が少女のそれであり、流石の演技力を見せている。なぜ、そうした演技が出来るのかというと、「頭が良い」からという身も蓋もない結論になるのだが、更に書くと、おそらくであるが、二十歳前後の知り合い(何人もいるはずである)の喋り方を観察して参考にしているのだと思われる。新妻聖子は頭で組み立てて考えるタイプの女優である。

新妻聖子の他にも、浦井健治、濱田めぐみ、山口祐一郎といった各世代の日本ミュージカル界のエースを注ぎ込んでいるため、演技や歌唱は文句なしに楽しめる。単純にエンターテインメントとしても充実した作品である。


えーっと、ところで、歴史を変えることになんのためらいも恥じらいも感じない方々がいらっしゃるようで。

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