観劇感想精選(220) ミュージカル「パレード」
作:アルフレッド・ウーリー、作詞・作曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン、共同構想およびブロードウェイ版演出:ハロルド・プリンス、演出:森新太郎。出演:石丸幹二、堀内敬子、武田真治、新納慎也、坂元健児、藤木孝、石川禅、岡本健一ほか。
1913年、アトランタ。南軍戦没者記念日。南北戦争終結から半世紀が過ぎたが、南北戦争従軍者や南部の男達はパレードに参加して南部の誇りを歌い上げていた。
ニューヨーク出身のユダヤ人であるレオ・フランク(石丸幹二)は、アトランタ生まれのユダヤ人であるルシール(堀内敬子)と結婚し、アトランタに住んでいる。アトランタの鉛筆工場に工場長として就職したためで、工場長の職は妻のツテを伝って得たものだった。北部出身のレオはアトランタの街に馴染めないものを感じていた。
南軍戦没者記念日にも仕事に出掛けたレオは、訪ねてきた13歳の少女、メアリー・フェイガンに給料を渡す。
だが、その日、メアリーは家に帰らず、黒人のニュート・リーがメアリーの遺体を発見する。第1発見者のニュート・リーと、工場長であるレオ・フランクが容疑者として逮捕される。逮捕されたのが黒人だとユダヤ人だと知ったジョージア州検事のヒュー(石川禅)は、差別の問題なども絡めてレオ・フランクを裁判に掛けるよう命令する。裁判では反ユダヤ反北部の気風により偽証が相次ぎ、レオには死刑が宣告される……。
レオ・フランク事件は、その後、完全な冤罪であるとされ、真犯人と思われる人物もわかっているのだが、レオはレイシズムの犠牲者のなったことがわかっている。ただ、今もレオが真犯人だと思い込んでいる人達がいるそうである。
偏見によるでっち上げが真実とされ、犠牲者が出ていく。冤罪が生まれる過程は、海の向こうのよそ事ではない。
ストリートプレーでなくミュージカルとして制作されたのは、音楽が物語の陰鬱さを中和するとともに物語を強く推し進める役割を果たしているからだと思われる。スネアが鳴るなど、南部特有の荒っぽく、リズミカルな伴奏に乗ってメロディーが紡がれていく。オーケストラピットが用いられており、上手と下とに橋が渡してあって、出演者がそこに乗って歌や演技を行うこともあり、またキャストがオーケストラピットから入退場を行うこともある。
重苦しくて嫌な話だが、出演者の好演と音楽や歌の充実もあり、骨太の上演となった。
| 固定リンク | 0
コメント