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2017年7月 2日 (日)

コンサートの記(308) 成田達輝&萩原麻未デュオリサイタル

2017年6月3日 京都コンサートホール小ホールアンサンブルホール・ムラタにて

午後2時から、京都コンサートホール小ホール・アンサンブルホールムラタで、成田達輝&萩原麻未デュオリサイタルを聴く。

開場前に、チケットカウンターで別の公演のチケット受け取ろうと待っていた時に、前にいた、いかにも「おずおず」といった雰囲気の女性が、「あの、萩原麻未の母親なんですけれど、娘のチケットは」と言うのが聞こえたので少し驚く。萩原麻未は、おずおずと登場してバリバリとピアノを弾き、また腰を低くして去って行くという、自信があるのかないのかよくわからないピアニストだが、「この母親にしてこの子ありか」と妙に納得してしまった。

成田達輝(なりた・たつき)は青森県生まれのヴァイオリニスト。中学時代からは前橋で育っている。2010年のロン=ティボー国際コンクール・ヴァイオリン部門で2位入賞。合わせてリサイタルで優秀な演奏を行った音楽家に与えられるサセム賞を受賞。2012年にエリザベート国際コンクール・ヴァイオリン部門でも第2位に入り、イザイ賞も受賞している。

萩原麻未は広島出身のピアニスト。私立広島音楽高校(現在は生徒数及び受験者数減少のため廃校)卒業後、パリ国立高等音楽院(コンセールバトワール・パリ)と同音楽院修士課程を修了。パリ地方音楽院室内楽科とザルツブルクのモーツァルティウム音楽院も卒業している。2010年にジュネーヴ国際コンクール・ピアノ部門で優勝に輝いている。


曲目は、前半がバッハ=グノーの「アヴェ・マリア」(萩原麻未独奏)、ストラヴィンスキーの「デュオ・コンチェルタンテ」、ラヴェルのヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番、後半がイザイのヴァイオリン・ソナタ第3番「バラード」(成田達輝独奏)、フランクのヴァイオリン・ソナタ。
無料プログラムの楽曲解説は、成田達輝と萩原麻未の二人が手掛けており、詳細な楽曲分析ではなく、その曲が生み出すイメージや作曲者のエピソードなどを記したものになている。


まずは萩原麻未の独奏による、バッハ=グノーの「アヴェ・マリア」。J・S・バッハの平均律クラーヴィア曲集第1巻前奏曲にグノーがメロディーを乗せたもの。元々は歌曲だが、ピアノソロ版で演奏される。
紫がかった青のドレスで登場した萩原麻未。まろやか且つ粒立ちの良い音でたおやかな音楽を奏でる。やはりピアノを弾くからにはこうした音で弾きたいと思う。私は才能不足だから無理だけれど。


ストラヴィンスキーの「デュオ・コンチェルタンテ」。作風を次々と変え、「カメレオン作曲家」とも呼ばれたストラヴィンスキーが書いたフレンチテイストの音楽。成田達輝のヴァイオリンは音に張りがあり、萩原麻未のピアノもフランス音楽にピッタリで、エスプリ・クルトワを感じさせる演奏となった。


ラヴェルのヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番。
演奏開始前に萩原麻未と成田達輝がマイクを持ってのスピーチを入れる。萩原麻未は、「京都の皆さん、こんにちは」と挨拶をし、成田達輝とのデュオは2013年から行っているのだが、京都で本格的なデュオリサイタルを行うのは初めてであることを告げる。
成田達輝は、ラヴェルのヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番は、成田がエリザベート国際コンクールの時に弾いた曲で、その模様を収めたYouTube映像を見た萩原麻未が「一緒にこの曲をやりたい」と言ってきたそうで、萩原の提案で実現した演奏であるということを説明する。

成田も萩原も巧みな演奏を聴かせる。萩原のピアノはとにかく指が良く回り、こうしたピアノをバックにヴァイオリンを演奏出来たら気持ちが良いだろなと、ヴァイオリンを弾いたことのない私でも思う。成田はピッチカートの表現などにも卓越したものがある。


後半。成田達輝の独奏によるイザイのヴァイオリン・ソナタ第3番「バラード」。超絶技巧が要求される曲だが、成田は難なく弾きこなしていく。演奏を終えた成田は客席からの喝采を浴びた。


フランクのヴァイオリン・ソナタ。萩原麻未は若緑色のドレスに着替えて登場。
ヴァイオリン・ソナタの中でも屈指の名作とされているフランクのヴァイオリン・ソナタだが、成田のヴァイオリンは艶がありスケールも大きく、萩原のピアノは硬軟強弱多彩で、とても洒落たフランク演奏となった。


カーテンコールでスタッフからお花を受け取った萩原と成田。萩原は「アンコール演奏をしてもいいですか?」とやはり控え目な発言をする。そしてお花をピアノの上に置いたのだが、演奏開始前にお花が床に落ちて、置き直すというアクシデントがあった。

アンコール1曲目は、マスネの「タイスの瞑想曲」。成田のヴァイオリンの歌い方は洒落ており、萩原のピアノも温かだ。

アンコール2曲目は、アメリカの作曲家であるクロールの「バンジョーとフィドル」。成田は「ジャズのような曲」と事前に語っていたが、軽やかな曲であった。

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