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2017年7月29日 (土)

コンサートの記(315) 広上淳一指揮京都市交響楽団第614回定期演奏会

2017年7月15日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団の第614回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一。

チラシなどには「広上淳一のブラームス讃 第1弾」と銘打たれたコンサート。曲目は、ブラームスの大学祝典序曲、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏:ピンカス・ズーカーマン)、ブラームスの交響曲第3番。


開演20分前からプレトークがある。お昼の公演なのだが、広上淳一は「こんばんはー」と言ってステージに登場。京都市交響楽団第2ヴァイオリン奏者の後藤良平と京都市交響楽団シニアマネージャー兼チーフマネージャーの柴田智靖も広上に続いて現れる。

まずベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のソリストを務めるピンカス・ズーカーマンの話。後藤良平は、イツァーク・パールマンなどの優れた弦楽奏者と共演したことがあるという話をし、広上と二人で、ズーカーマンは、パールマンやアイザック・スターンと同じユダヤ系ヴァイオリニストだという話になる。ズーカーマンが京響と共演するのは今日が初めてだそうである。

続いて、広上がブラームスの交響曲第3番を指揮するのは今日が3回目だという話をする。難しい曲なので取り上げにくいらしい。広上がまだ駆け出しの頃、受けた指揮者コンクールでブラームスの交響曲第3番が課題曲だったのだが、「ロマンの塊」のようで、「これは難しいぞ」と感じた思い出などを語る。

ブラームスの大学祝典序曲。広上や後藤は「旺文社の大学受験ラジオ講座」のテーマ曲として知ったそうで、広上は大学浪人時代にずっと「旺文社の大学受験ラジオ講座」を聞いていたのだが、テーマ曲がブラームスの大学祝典序曲であるということは知らず、大学に入ってから曲名を知ったそうである。
後藤は、「京都は大学生の比率が日本一多い街、だいたい10人に1人で京都市の人口が150万弱だから14万人」と語り、この曲が京都で演奏するのに相応しい曲だと述べた。
その他、祇園祭の話も出たのだが、広上は幼い頃に父親に連れられて祇園祭を見たものの(山矛巡行だと思われる)人ばかりで何も見えなかったという思い出があるそうだ。


今日のコンサートマスターは客演の豊嶋泰嗣、フォアシュピーラーに泉原隆志。今日はソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積も出演する。管は多くの首席奏者がブラームスの交響曲第3番のみ登場した。


ブラームスの大学祝典序曲。最近では演奏が良くても心揺すられることは余りないのだが、広上のブラームスには感心させられた。明晰で美しく、繊細で上品な演奏。特筆すべきは日本人ならではの細やかな感性が十全に生きていることで、日本人指揮者と日本のオーケストラがなし得るものとしては最上レベルの演奏と書いて間違いないと思う。


ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。
ソリストのピンカス・ズーカーマンはユダヤ系のヴァイオリニストらしく磨き抜かれた美音と高度なメカニックを披露。音に張りがあり、明るい。ステージ上が明るくなったかのように錯覚するほどだ。ポルタメントの使い方も味わい深い。
広上指揮の京都市交響楽団も充実した伴奏を聴かせる。丁寧で構築感抜群の演奏であり、第3楽章のオーケストラのみの演奏場面ではズーカーマンはオーケストラの方を振り向いて満足げな表情を見せる。ズーカーマンは京響のことが大分気に入ってしまったようだ。

大曲であるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ということでアンコール演奏はなし、最後はズーカーマンは手ぶらで現れ、アンコールを演奏しないことを示した。


ブラームスの交響曲第3番。大学祝典序曲同様、日本人の美質が十全に発揮された演奏である。立体感もあり、音色は澄んで、旋律の歌い方にも日本人好みの小粋さがある。各楽器の奏者達の技術も高く、世界中でこのコンビだけが再現できるブラームスであったと思わせる快演であった。

なお、今日と明日の演奏会はハイレゾによる収録が行われ、後日配信される予定である。

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