コンサートの記(316) エリアフ・インバル指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第510回定期演奏会
午後7時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第510回定期演奏会を聴く。今日の指揮は日本でもお馴染みのエリアフ・インバル。
マーラーの交響曲第6番「悲劇的」1曲勝負である。
エリアフ・インバルは1936年生まれのイスラエルの指揮者。フランクフルト放送交響楽団(現・hr交響楽団)の首席指揮者として一時代を築き、「マーラー交響曲全集」と「ブルックナー交響曲全集」は共に名盤として知られる。マーラーとブルックナーの両方を得意とする数少ない指揮者でもある。東京都交響楽団の特別客演指揮者を経てプリンシパル・コンダクターとなり、現在は桂冠指揮者の称号を得ている。都響とはマーラーの交響曲全曲演奏会を二度行い、「マーラー交響曲全集」も制作した。
インバル指揮のコンサートは、20年ほど前にNHK交響楽団に客演した土曜マチネーの定期演奏会を聴いたことがあるのだが、もうほとんど記憶に残っていない。それ以来二度目の実演となる。
今日のコンサートマスターは崔文洙。いつもとは異なり、アメリカ式の現代配置での演奏である。曲の特色からいって、アメリカ式現代配置の方が低弦の音の受け渡しがスムーズに思える。
第2楽章がスケルツォ、第3楽章がアンダンテでの演奏。ハンマーが打ち下ろされる回数は2回である。
いつもより編成が大きいとということもあるが、大フィルは良く鳴る。インバルのマーラーは美演の傾向があるが、今日の大フィルも弦は輝き、管も力強い。第3楽章終盤の寄せては返す波のようなエモーショナルな部分などは驚くほど美しく、やはり良い指揮者を迎えた時の大阪フィルはスーパーオーケストラに変貌を遂げるようだ。
大阪フィルというとホルンがアキレス腱だったのだが、世代交代したということもあり、今では段違いのレベルアップを遂げた。
インバルのリズム感も良く、キビキビとした音運びが聴かれる。大フィルの特徴であるしっかりと築かれた低弦がプラスに作用し、マーラーのおどろおどろしい一面も浮き上がる。ハープの特殊奏法なども低弦の厚みとの対比で効果的になる。
大阪フィルによるマーラーの「悲劇的」は大植英次の指揮で二度聴いたことがあるが、楽曲構造の把握しやすさに関していうなら今日のインバル指揮の演奏の方が上のように思う。流石は世界的に認められたマーラー指揮者だけのことはある。
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