楽興の時(16) 「テラの音 Vol.19」
お寺で行われる無料の音楽会「テラの音」。そうだ!お寺に行こう!プロジェクトの一環である。浄慶寺の住職である中島浩彰と、ヴァイオリニストでヤマハ音楽教室とJEUGIAの講師、母校である同志社女子大学音楽専攻の非常勤講師を務める牧野貴佐栄(まきの・きさえ)の共同主催。
今回は、岸田うらら、田中めぐみ、中村めぐみという3人の打楽器奏者によるコンサートである。3人ともプロ吹奏楽団であるウインドアンサンブル奏(かなで)の打楽器奏者だそうだ。
マリンバと、フラメンコなどで使われるカホンという楽器が主に使われる。
3人で1つのマリンバを奏でるパッヘルベルのカノン・ジャズ・バージョンでスタート。その後は、田中めぐみと中村めぐみがマリンバを演奏し、岸田うららがカホンなど他の打楽器を受け持つ。
その後の第1部のプログラムを挙げると、「ティコティコ」、「赤とんぼ」、「赤いスイートピー」、「津軽海峡・冬景色」、「Sing Sing Sing」、「キャラバンの到着」など、童謡からJポップ、演歌、ジャズ、映画音楽と幅広い音楽が奏でられる。
始まりと、第1部第2部の合間に浄慶寺の中島浩彰住職によるお話の時間が設けられている。
中島住職は、毎年、東日本大震災の被災地に慰問に行っているのだが、仲間達と「暴走する僧侶と、俗人達」という意味で「暴僧俗」という名の団体を結成しているそうだ。今年は中島住職はオートバイで、仲間達は小型車やキャビンカーで岩手県の陸前高田市まで向かったという。午前3時に大津パーキングエリアに集合で、そこから夜8時までほぼ走りっぱなしで1200キロを踏破して陸前高田に着いたそうだ。
陸前高田では今、海沿いに高い壁を築いており、山を切り崩して津波にさらわれた市街地全てを盛り土するという作業を続けているそうだ。山から海沿いまでベルトコンベアで土が運ばれていたという。
三陸鉄道は、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で取り上げられてから1、2年ほどはブームになったが、その後は乗降客がめっきり減ってしまったとのこと。
ただ、陸前高田の人は、物質的な事柄よりも「心が寂しくなった」ことを嘆いていたという。
第2部の演目は、ハチャトゥリアンの「剣の舞」、星野源の「恋」、「愛の賛歌」、「カリンボブ」、「蘇州夜曲」、「情熱大陸」
「剣の舞」は通常の演奏が終わった後、岸田うららが「私たちはこんな程度ではありません」と宣言し、超高速(約1・5倍)での演奏が再度行われる。
「カリンボブ」は、マリンバとアフリカの民族楽器であるカリンバのデュオのためにコルベルクが作曲した作品。ただし、ドラム入りで演奏されることが多いそうで、岸田うららのカホンを加えて演奏された(カリンバ独奏は田中めぐみ)。
岸田の使っているカホンは、東福寺の塔頭である常光院の和尚が手がける遼天Cajon工房のもので、岸田は遼天Cajon工房とエンドースメント契約といって、演奏会で必ず遼天Cajon工房のカホンを使用することを条件として無償で貸与されているという。なぜ和尚さんがカホンを作っているのかというと、カホンを見て欲しくなり、奥さんに「買っていい?」と聞いたが「駄目」とのことで、「仕方ないから自分で作るか」ということで作ってみたら思いのほか良いものが出来たので、「じゃあ、売ろう」となったらしい。
ラストにアンコールとして、「情熱大陸」の前半部分が再度演奏される。
プロ楽団団員の演奏ということで、プロのマリンバソリストのような圧倒的な切れ味こそないものの安定した演奏と美音を楽しむことが出来た。
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