観劇感想精選(224) 佐々木蔵之介主演 「リチャード三世」
シルヴィウ・プルカレーテはルーマニア出身の演出家。エディンバラフェスティバル批評家賞最優秀作品賞、ピーター・ブルック賞、ダブリン演劇祭批評家賞など数々の栄冠を勝ち得ているという。
耽美的な「リチャード三世」という印象である。
三面が石壁という舞台設定(実際はカーテンが降りている)。酒場とおぼしき場所。三人のサックス奏者が演奏し、白いシャツを着た男達が車座になって、音楽に合わせてステップを踏んで踊っている。その中の一人が客席の方に向き直る。佐々木蔵之介(リチャード三世)である。佐々木は有名な冒頭のモノローグを語り、セリフをクラレンス役の長谷川朝晴に振る。冒頭は酒場に集った男達が余興で「リチャード三世」を演じているという設定である。そのままの設定でいくのかと思ったが、余興というのは冒頭のみの設定だったようで、その後は比較的リアルな演技スタイルでの上演が行われる。
渡辺美佐子以外は全員男性というキャスト。紅一点、と呼ぶには年が行きすぎているかも知れないが、渡辺美佐子が演じるのは代書屋という役名のオリジナルキャスト。正体はおそらくシェイクスピア本人であると思われる。代書屋はラフを巻いている。
佐々木蔵之介演じるリチャード三世は酒をラッパ飲みし、スープを鍋からかっくらうという野性味溢れる人物である。リチャード三世はせむし(体が曲がっている)という設定だが、佐々木はいくつかのシーンで体を屈めての演技を行っていた(リチャードがせむしを演じているという設定)。
映像を使用しており、リチャード三世の夢のシーンではその映像と影アナで独特の雰囲気を生み出していた。
佐々木蔵之介は「マクベス」で主演したときも戦闘シーンを端折ったバージョンで上演していたが、今回も戦闘シーンはなく、リチャード三世と代書屋の二人だけのシーンを代わりに入れていた。
リチャードに殺された人々が現れて呪いの言葉をリチャードに次々と浴びせる悪夢の場面は、サックスの伴奏に合わせて幽霊達が歌うという処理がなされていた。少し軽い気もするが、その後のアンビエントミュージックを使用したシーンと見事な対比を生んでいたように思う。
最初は舞台上に大勢いた人々が徐々に減っていき、リチャード一人だけの場面へと繋がる。所詮は道化のリチャード。その寂寞とした孤独感が胸に染みる。
カーテンコールは4度。3回目からは客席が総立ちとなった。
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