コンサートの記(327) 「京都市交響楽団 meets 珠玉の東アジア」
日中韓3カ国の楽曲と出演者による音楽の祭典。
曲目は、第1部が、チェ・ソンファンの管弦楽曲「アリラン」、リュー・ツェシャン&マオ・ユァンの「瑶族舞曲」、外山雄三の「管弦楽のためのラプソディー」、第2部がビゼーの歌劇「カルメン」(ハイライト)。
今日のコンサートマスターは渡邊穣、フォアシュピーラーに片山千津子。ドイツ式の現代配置だが、今日は下手に打楽器が並ぶため、ホルンは下手ではなく上手奥に陣取る。「カルメン」の演奏会形式上演があり、歌手が出入りするため、すり鉢式のステージは用いず、弦は平土間の上での演奏である。
P席は第2部で合唱(京響コーラス)が用いるため、今日は販売されていない。
チェ・ソンファンの管弦楽曲「アリラン」。
チェ・ソンファンは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の作曲家。管弦楽曲「アリラン」は朝鮮半島を代表する民謡をチェ・ソンファンが1976年にアレンジしたもの。現在では韓国と北朝鮮の両国で盛んに演奏されている。
広上指揮の京響は透明感のある音でムクゲの香りが会場を満たすかのような典雅な演奏を繰り広げる。
リュー・ツェシャンとマオ・ユァンの「瑶族舞曲」。中国南部の少数民族・瑶族(ヤオ族)の民謡を基にリュー・ツェシャンとマオ・ユァンが二人で作曲したものである。ヴァイオリンが二胡を模したレガート奏法を行うなど、中華的な色彩に富んだ楽曲である。
広上は音のパーツパーツを絶妙のタイミングで組み込んでいく。キビキビとした音運びと滑らかな歌も印象的である。
外山雄三の「管弦楽のためのラプソディー」。広上は冒頭をきっちりと三つに振る。今日はすり鉢状のステージを採用していないということもあり、低弦が弱めで音の重心も高いが、アンサンブルの精度は高く、リズム感も万全である。土俗感と叙情味の表出も上手い。
第2部。ビゼーの歌劇「カルメン」(ハイライト)。
上演曲は、第1幕より子どもたちの合唱、「前奏曲」、第1幕より「ハバネラ」、第1幕より「セギディーリャ」、第2幕より「ジプシー・ソング」、第2幕より「闘牛士の歌」、第2幕より「花の歌」、第3幕より「カルタの三重唱」、第4幕より「合唱行進曲」、第4幕よりフィナーレ。
出演は、池田香織(カルメン。メゾ・ソプラノ)、ユン・ビョンギル(ドン・ホセ。テノール)、ジョン・ハオ(エスカミーリョ。バス)、チョン・ヨンオギ(フラスキータ。ソプラノ)、谷口睦美(メルセデス。メゾ・ソプラノ)
宮本益光が構成とナレーションを手掛ける。
今回は、「カルメン」の原作であるメリメの小説を基に再構成したテキストを宮本益光が読み上げることで物語が進行していく。ちなみに、メリメの「カルメン」と歌劇「カルメン」とでは大きく設定が異なる場面があるため、辻褄が合わなくなっている部分もある(原作ではカルメンは山奥で殺害されるため、今日読み上げられたテキストにあった「そしてホセはカルメンの亡骸を誰の目にも触れないところまで運び、埋めた」で良いのだが、オペラではカルメンは闘牛場の前、つまり街中で殺されるため、誰の目にも触れないところまで運んで埋めるのは不可能である)。
まず京都市少年合唱団のメンバーが現れ、横一列に並んで合唱を歌う。当初ではハイライト上演では子どもたちの場面はカットする方向でプランが進んでいたのだが、せっかく良い少年合唱団がいるのに使わないのは勿体ない、折角だから第1曲で、ということで一番最初に子どもたちの合唱が来たようだ。
宮本益光が、メリメの小説「カルメン」の冒頭を読み上げて本編(でいいのかな?)スタート。歌手達はドレスアップして登場し、演技も行う。一部では客席の通路も用いられた。
広上は、ジプシー・ソングの終盤で加速し、興奮を誘う。また「闘牛士の歌」では冒頭を思いっきりためて歌い、演劇的な感興を生み出していた。
歌手達も声の通りが良く、優れた歌唱を聴かせる。エスカミーリョ役のジョン・ハオだけはステージに馴染んでいない気がしたが、歌い慣れていないのかも知れない。
宮本益光は抑えた調子でナレーションを行い、効果的であった。
P席に並んだ京響コーラスも威力抜群の歌唱を聴かせる(P席に合唱が陣取ると、音響的にソリストの歌がかき消されそうになるようである)。
広上指揮の京響はフランス的な濃厚な色彩を発揮。見事であった。
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