コンサートの記(332) 宮川彬良指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2017「魔法のオーケストラ」第3回“歌うメロディ”
曲目は、シャーマン兄弟のシンフォニック!「メリー・ポピンズ」、ロジャースの「シャル・ウィ・ダンス?」、ミシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」、ヘンリー・マンシーニの「ハタリ!」より“仔象の行進”、いずみたく作曲の「見上げてごらん夜の星を」、モーツァルト作曲・宮川彬良編曲の「アイネ・クライネ・タンゴ・ムジーク」、ベートーヴェン作曲・宮川彬良編曲のソナタ№14「月光」、宮川彬良が編んだ「オーケストラの為のソドレミ・メドレー」(初演)、チャーチル作曲のファンタジック!「白雪姫」
今日はポップスオーケストラのようなプログラムである。
今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。第2ヴァイオリン首席は今日も客演で、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団コンサートミストレスの赤松由夏が務める。
宮川彬良は、スカーレットのベストで登場。手首から先を動かす振り幅の小さい指揮である。たまにおどけた仕草を見せる。
お姉口調で有名な宮川だが、「メリー・ポピンズ」を演奏し終えてから1階席の方に向き直り、マイクを手にして意図的にねっとりとした口調で「みなすぁまぁ」と言って笑いを取る。
ナビゲーターのガレッジセールが登場。川田が「表情がユニークですね!」と言う。ゴリが「僕らモニターで見てたんですけど、楽しくて早く(ステージに)出たくなった」と続ける。
ガレッジセールの二人がポディウム席(今日は自由席)の人たちに「面白い顔見た人」と聞き、大勢が手を挙げた。
宮川は、「今日は、ガレッジセールのお二人に、作曲が出来るようになったかのような体験をしていただきます。更にヒット曲の作り方などもお教えします」と言う。ガレッジセールの二人は「夢の印税生活」と嬉しそうに顔を見合わせるも宮川は「そう上手くはいかないんですけどね」
開演8分ほど前に、京響ステージマネージャーの日高さんが、指揮台の横にフリップを仕込むのを見たのだが、ここでフリップを使う。フリップには「半音の誘惑」と書かれている。半音には誘惑の要素があるということで、宮川がピアノでウエーバーの「舞踏への勧誘」を弾きながら「誘惑、誘惑」と歌いつつ顔芸をする。ゴリが「宮川さん、顔面白すぎ。宮川さん見ちゃう」と言う。
半音を誘惑に使った例として、宮川はフルートにベートーヴェンの「エリーゼのために」を演奏して貰い、続いてトランペットに山口百恵の「ひと夏の経験」を吹いて貰う。そして「人間だけじゃないのよ」ということで、「JAWS」のテーマも演奏させた。
「シャル・ウィ・ダンス?」は、「舞踏への勧誘」、ジャズナンバーの「レッツ・ダンス」、「マイ・フェア・レディー」より「踊り明かそう」を加えた編曲である。
「シェルブールの雨傘」。分散和音をなぞる形でメロディーが紡がれている作品である。分散和音で作られた曲は売れるのが長い、つまりロングセラーになりやすいと宮川は解説する。宮川は「分散和音がキャッチー」と書かれたフリップを四方の客席に見せて回り、がレッジセールの二人から口々に、「もう芸人に見えてきた」、「R-1に出てそう」と言われる。
演奏終了後、ゴリは「シェルブールの雨傘」の感動のラストシーンのことを語り、宮川と二人で夢中になる。
ザ・ボトラーズの二人が登場。男女のコンビで、男の方はサングラスを、女の方はドミノマスクをつけている。ゴリが「トランペットの早坂さんと稲垣さんのお二人じゃないですよね?」と聞き、宮川は「の、ようなものです」と答える。瓶にはコーラが入っていて、量でチューニングをするようである。女性の方がチューニングを始める時に宮川は「じゃ、稲垣さん、あ、ザ・ボトラーズ……」と言って、ゴリに「稲垣さんって言っちゃったじゃない」と突っ込まれていた。
演奏であるが、コーラのボトルを何本も使うため、かなり忙しそうである。
「見上げてごらん空の星を」。宮川とゴリが指揮台の上に座ってだべるような形で解説。宮川は「距離と角度」と書かれたフリップを出して、「見上げてごらん」のメロディーが飛躍するということを話す。
「見上げてごらん夜の星を」であるが、ジョン・ウィリアムズの「E.T.」や、「ピノキオ」の「星に願いを」のメロディーを加えたファンタジックなものになっていた。
後半。宮川はベストを青色のものに変えて登場する。
「アイネ・クライネ・タンゴ・ムジーク」。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」にタンゴの要素を加えて編曲したものである。いうほどタンゴタンゴしてはいない。
ソナタ№14「月光」。分散和音が続く曲として宮川が紹介する。宮川がピアノ独奏を行い、それを管弦楽が彩っていくというバージョン。宮川はこの編曲ではそれほど自分の色を出していない。
「オーケストラの為のソドレミ・メドレー」。書き上げたばかりの曲で今日が初演である。クラシックに限らず、ヒットした曲は「ソドレミ」で始まる曲が多い、ということで、「高校三年生」や「蠍座の女」を宮川は例としてピアノで弾いた。
演奏されるのは全部で27曲。「千の風になって」「この道」「五木の子守唄」「ピクニック」「白鳥の湖」「ユー・アー・マイ・サンシャイン」「モルダウ」「ドナドナ」「峠の我が家」「山の音楽家」「ツィゴイネルワイゼン」「メリー・ウィドウ」「ハバネラ」「七夕さま」「しゃぼん玉」「赤とんぼ」「浦島太郎」「ドラゴンクエスト」「サザエさん」「日立の樹」「松竹梅」「哀しみのソレアード」「さようならみなさま」「地上の星」「世界に一つだけの花」「もみの木」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
京響ファゴット奏者の村中宏がフリップめくり係をユーモラスに務めた。
宮川は、「私の父親も作曲家だったのですが(「宇宙戦艦ヤマト」などでお馴染みの宮川泰)、口癖でよく「メロディーがもうなくなった」と言っておりました。ただ私はソドレミでこれだけ多様な表現が出来るのだから、そうではないんじゃないか」と作曲の可能性について言及する。ピアノを弾きながら、「音はただの音でしょう。こっちもただの音でしょう。でも音と音とを繋ぐとメロディーになる。繋ぐのは、それは愛でしょう?」
ラストのファンタジック!「白雪姫」。愛らしい演奏となった。
京響は透明感溢れる音を生かした好演を展開。音の通りが良く、チャーミングな表情を生み出している。
ゴリが、「今日のこれで、宮川さんに憧れて作曲家になりたい!と思う人が出てくるかも知れませんね」と言うが、宮川は、「責任は持てません」と答えていた。
アンコールとして宮川彬良の作品が2曲、「風のオリヴァストロ」とNHK連続テレビ小説「ひよっこ」より“がんばっぺ みね子”が演奏される。いずれもメロディアスで美しい曲であった。
| 固定リンク | 0
コメント