コンサートの記(336) 夏川りみ&京フィル クリスマスコンサート2017岐阜羽島
不二羽島文化センターは、元の羽島市文化センター。1998年に開館し、昨年、羽島市に本社を置く不二商事がネーミングライツを獲得して現在の名前に改まっている。愛称使用期間は5年間の予定。
「夏川りみ&京フィル クリスマスコンサート」は、午後6時30分開演。ちなみにコンサートスタッフの大半はお爺ちゃんとお婆ちゃんで、「羽島市は大丈夫なのか?」と思うが、多分、大丈夫ではない。若者が少ないということは容易に想像できる。
今日はアンケート用紙にも記入したのだが、住所の欄に「 県」としか記入されていない。北海道から来る人は流石にいないかも知れないが、都や府からの来場者も想定されていないようだった。
指揮とMCを担当するのは井村誠貴(いむら・まさき)。後半では公募で集まった小中学生57名からなる児童合唱団と羽村市文化センター合唱団29名が共演する。
曲目は、まず井村指揮京フィルのみで、歌劇「カルメン」より前奏曲、パッヘルベルの「カノン」、ケーニッヒの「ポストホルン・ギャロップ」、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲の4曲が演奏され、夏川りみの歌唱で「童神(わらびがみ)」、「島人(しまんちゅ)ぬ宝」、「さとうきび畑」(ショートバージョン)、「あしたの子守歌」の4曲。後半は、映画「風と共に去りぬ」よりタラのテーマが京フィルによって演奏された後で夏川が登場し、「芭蕉布」、「涙そうそう」、「安里屋ユンタ」が歌われた後で、京フィルと羽村市の合唱団によるクリスマスメロディーと「上を向いて歩こう」の演奏があり、最後は夏川と羽村市の合唱団、京フィルによる「見上げてごらん夜の星を」の共演となる。
指揮の井村誠貴であるが、今日もセカセカとしてテンポを取りがちで、オーケストラのみによる演奏では聴かせどころもあっさりと通過。これでは味わいが出ない。
キビキビとした指揮姿で、ジャンプなども繰り出すが、京フィルの編成を差し引いても、見た目から想像するほどには鳴っていない。京フィルとはオールディーズの新譜なども出している井村であるが、壁に当たっているという印象を受ける。
京フィルは、ケーニッヒの「ポストホルン・ギャロップ」では、女性ポストホルン奏者が、竹箒を使ったポストホルンを使用して、掃除のおばちゃんが舞台に闖入したかのような演出を行うなど、遊び心に満ちている。
夏川りみの調子はホールの音響もあってそれほど良くないようにも感じたが、やはり声が持つイメージ喚起力は抜群。声に映像が宿っているかのようであり、あたかも映画を観ているかのような楽しみ方も出来る。
「島人ぬ宝」では、夏川は「指笛なども出来る人はやって欲しい」とリクエストしたが、「出来たらでいいよ。ちなみに私も出来ないからさあ」と言っていた。当然ながら沖縄人なら誰もが指笛を吹けるというわけではないため、指笛の音がする縦笛やホイッスルが売られており、今日は井村が指笛ホイッスルを吹いていた。
「あしたの子守歌」は、宮沢和史の作詞・作曲。夏川によると「本当は作詞・作曲出来たらいいんだけど、私、出来ないからさあ。人に頼むしかなくて、誰がいいかなと思ったら宮沢和史さんが浮かんで、ダメ元で頼んだら『いいよ』ということで」書いて貰ったそうである。
「島人ぬ宝」と「涙そうそう」では、三線を弾いていた夏川だが、三線を弾き始めたのは「涙そうそう」がヒットした後だそうで、沖縄にいた頃は三線のことを「おじいおばあの弾くもの」だと思っていたが、「涙そうそう」に出てくる三線の旋律を自分で弾いてみたいと思い、そこから練習を始めたそうである。
「安里屋ユンタ」では、お馴染みとなった客席とのジョイントがある。「サーユイユイ」という合いの手と、「マタハリヌツンダラカヌシャマヨ」というサビは聴衆も一緒に歌い、サビの部分ではカチャーシをつけて聴衆も踊る。
「クリスマスメドレー」演奏前に、井村が児童合唱団の8歳の女の子に話を聞いたのだが、将来の夢に「ネイリスト」と今時の子供らしい答えをして客席の笑いを誘っていた。
その「クリスマスメドレー」であるが、臨時編成の児童合唱団ということで、クオリティの高さは望むべくもない。ただ元気が良いので微笑ましい。井村がもっと遅めのテンポを取っていたら子供達の美質がもっと生きたようにも思えたのだが。
アンコールは、喜納昌吉の「花」。夏川は1番をマイクなしのアカペラで歌唱。クラシックの歌手ほどの声量は当然ながらないが、情報量豊かな歌声によって聴き手の集中力を引きつけていく。ラストが転調するバージョンでの歌唱であり、ダイナミックで感動的な音空間が築き上げられる。やはり夏川りみは特別な才能を持った歌手だと実感せずにはいられない夜となった。
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