コンサートの記(345) 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ・コンサートシリーズ 小谷口直子 室内楽演奏会 vol.2
曲目は、湯浅讓二の「クラリネット・ソリテュード」、武満徹の「カトレーンⅡ」、メシアンの「時(世)の終わりのための四重奏曲」。全て20世紀に書かれた作品である。
まずは小谷口直子のクラリネットソロによる湯浅讓二の「クラリネット・ソリテュード(孤独)」。無料パンフレットによると小谷口直子が大学4年生の時に卒業試験の曲として選んだ曲だそうである。演奏後に行われたトークによると、「昔は孤独に酔いしれることが出来た」そうだが、「今は仲間が欲しい」と思うようになったそうだ。
「クラリネット・ソリテュード」は、高い音色が駆使されており、倍音や和音の奏法も用いられている。メロディーラインは尺八で演奏するのに似つかわしいものであり、本当に尺八を念頭に置いて作曲されたのかも知れない。
武満徹の「カトレーンⅡ」。小谷口直子は、武満の著書である『音、沈黙と測りあえるほどに』に書かれた文章を無料パンフレットに載せているが、武満の音楽は本当に沈黙を埋めるように音が敷き詰められており、横への拡がりがある。フランス人から「日系フランス人作曲家」などとも賞された武満であるが、フランスの現代音楽作曲家でメシアンの「時の終わりのための四重奏曲」が音が佇立する傾向にあるのとは対照的である。またメロディーというよりも音の明滅に重点が置かれているようでもある。
オリヴィエ・メシアンの「時の終わりのための四重奏曲」。無料パンフレットに寄せられた小谷口直子の文章には、「“時の(世の)終わり”にあたる言葉が示すものは、戦争で破滅に向かうとか、長い抑留生活から連想されるようなものではなくて《過去や未来という概念の終わり、つまり永遠の始まりを表現したものだ》というメシアン自身の言葉」が紹介されており、おどろおどろしさよりも崇高な側面が強調されている。
小谷口がトークで、「演奏する方よりも聴く方がしんどいプログラムになっております」と発言したが、演奏時間50分、内容は難解ということで、聴きやすい音楽ではない。ただこの音楽の響きの美しさは伝わってくる。特に、クラリネット、チェロ、ヴァイオリンがソロを取る部分でそれは顕著であり、ラストのヴァイオリンとピアノのデュオはキリスト教的な「救い」の美に充ち満ちている。
アンコール演奏はなし。その代わりとして(?)出演者と聴衆による記念撮影がある。写真が後日、小谷口のブログに載せられるとのことだ。
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