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2018年2月21日 (水)

コンサートの記(349) 日本センチュリー交響楽団特別演奏会「山田×樫本×センチュリー、“夢の饗宴”」

2018年2月13日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、日本センチュリー交響楽団特別演奏会「山田×樫本×センチュリー、“夢の饗宴”」を聴く。共に1979年生まれである指揮者の山田和樹とヴァイオリニストの樫本大進の共演。

日本人若手指揮者を代表する存在である山田和樹。東京藝術大学在学中にトマト・フィルハーモニー管弦楽団(現・横浜シンフォニエッタ)を結成して指揮活動を行い、2009年にブザンソン国際指揮者コンクール優勝という経歴から「リアル千秋真一」と呼ばれたこともある。現在は、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督兼音楽監督、スイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、東京混声合唱団音楽監督兼理事長、横浜シンフォニエッタ音楽監督を務める。

ソリストとしてデビュー後、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第1コンサートマスターに就任した樫本大進。フリッツ・クライスラー国際音楽コンクールとロン=ティボー国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で優勝を飾っている。7歳で入学したジュリアード音楽院プレカレッジを経てフライブルク音楽大学に学んでいる。


曲目は、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番とチャイコフスキーの交響曲第4番。

今日の日本センチュリー交響楽団のコンサートマスターは、首席客演コンサートマスターの荒井英治。


サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲。ソリストの樫本大進は日本人ヴァイオリニストとしては珍しくラテン気質のヴァイオリンを弾く人だが、今日は熱さと艶やかさの中にも、例えば第2楽章のラストに顕著な繊細さを備えた演奏を繰り広げ、日本人的な一面を見せる。スケールは大きく、構造力も確かである。

今日の山田和樹はアグレッシブな指揮。両腕を目一杯振り、ジャンプを繰り出す。日本センチュリー交響楽団は中編成ということもあり、元々輪郭のクッキリした音楽を生む傾向があるが、山田の指揮により立体感が増し、各パートが把握しやすい音作りとなっていた。

樫本はアンコールとして、J・S・バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番より“ガヴォット”を演奏。速めのテンポによる流麗とした演奏であった。


チャイコフスキーの交響曲第4番。出だしのホルンが今ひとつ合わない。センチュリー響のホルン陣は在阪オーケストラの中ではレベルが高いが、今日は第1楽章に関しては不調が続く。
山田はゲネラルパウゼを長めに取ったり、冒頭では遅いテンポを取るなどの特徴があるが、次第にギアを上げ、チャイコフスキーの今にも溢れ出そうな絶望のうねりを音として描いていく。時にはフォルムを崩してまでも内容を重視。表現主義的なチャイコフスキーとなる。指揮姿にも特徴があり、一拍目だけを振ったり、全てを棒で示したり、ジャンプだけで表現を行ったりと仕草が多彩である。
第2楽章の孤独感の表出にも長けているが、寂しさだけではない若々しい叙情味も感じられる。
第3楽章冒頭では山田は顔の動きと表情のみで指揮。その後の動きもバラエティに富んでいる。それにしても山田は本当に立体感の表出が巧みである。
第4楽章では山田は外連を発揮。極端な減速と加速(アゴーギク)により、これまで聴いたことのない表情を生み出す。かなり個性的なチャイコフスキーである。そして意図的に皮相な表情を保ったまま、ラストへと突っ込んでいく。空転したままの勝利という解釈なのだろう。

チャイコフスキーの交響曲というと、「悲愴」や第5が取り上げられる回数が多いが、あるいはこの第4が最高傑作なのかも知れない。


アンコール演奏がある。山田は客席の方を振り返って、「日本初演であります」と言って演奏開始。弦楽によるリリカルな音楽である。ジョージア(旧グルジア)のアザラシヴィリという作曲家の「ノクターン」という曲だそうである。

山田の溌剌とした指揮姿を見てふと「若い頃の小澤征爾って今日の山田のような雰囲気じゃなかったのかなあ」という思いが浮かんだ。二人とも指揮姿に人を惹きつけるチャームがあるのである。

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