コンサートの記(351) アンドレア・バッティストーニ指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第515回定期演奏会
2018年2月17日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて
午後3時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで大阪フィルハーモニー交響楽団の第515回定期演奏会を聴く。指揮は「未来のトスカニーニ」の異名を持つアンドレア・バッティストーニ。
1987年生まれ、まだ30歳という若さのバッティストーニ。「ロミオとジュリエット」の舞台としても知られるイタリア・ヴェローナの出身である。現在、東京フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者を務めており、「題名のない音楽会」に出演するなど、日本でも著名な存在になりつつある。
曲目はレスピーギの「ローマ三部作(交響詩「ローマの噴水」、交響詩「ローマの祭り」、交響詩「ローマの松」)。バッティストーニは東京フィルと「ローマ三部作」を録音しており、評価も高いが、私は今ひとつピンとこなかった。
今日のコンサートマスターは崔文洙。電気オルガンは関西ではお馴染みの桑山彩子が奏でる。
印象派の影響を強く受けているとされる交響詩「ローマの噴水」。音の陰影を微妙に変えていくレスピーギの手法をバッティストーニは巧妙な棒で解き明かしていく。大阪フィルの音色にはもっと洗練も求めたくなるが、音色の移ろいの浮かび上がらせ方などには優れたものを感じる。
映画音楽的な要素を持つ交響詩「ローマの祭り」。バンダは2回下手バルコニー席に陣取る。バッティストーニはオーケストラを鳴らす術に長けており、冒頭の音を目一杯鳴らす。そのためフェスティバルホールが壮大に鳴り、バンダのトランペットが聞こえにくくなっていた。
迫力のある「ローマの祭り」であるが、第4部の「主顕祭」の冒頭で打楽器奏者が一斉に立ち上がるなど、視覚面でも面白さがある。ただ大フィルの音はこの曲を演奏するにはやや重いようである。伝統的にドイツものに強い大フィルだが、ドイツの地方オーケストラが無理矢理イタリアものに挑戦したような感じになっていた。
ローマ三部作の中で飛び抜けて有名な交響詩「ローマの松」。1996年12月のNHK交響楽団定期演奏会で、今なにかと話題のシャルル・デュトワの指揮で聴いた「ローマの松」は実に鮮烈であった。あの不器用なN響が信じられないほど輝かしい音で鳴った。
バッティストーニの指揮する「ローマの松」は若手指揮者らしい瑞々しい音で奏でられる。バッティストーニは見た目もガッチリしているし指揮姿も激しいが、それは一種のフェイクであるように思える。実際は細部に至るまで丁寧に作り上げており、匂うような上品さがある。
いわゆる爆演が好まれる傾向にある「ローマの松」だが、バッティストーニは見た目とは裏腹に無闇な虚仮威しは好まないのだろう。トスカニーニやムーティといったイタリア人指揮者がよくやるような演奏ではなく、フランス系の指揮者が作り上げるような「ローマの松」になっていた。レスピーギがドビュッシーから受けた影響もよく分かる。
バンダは「ローマの祭り」の時と同様に下手バルコニー席と、更に上手の3階BOX席に配され、効果的な音響を生んでいた。
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