コンサートの記(354) ヘスス・ロペス=コボス指揮 日本センチュリー交響楽団第187回定期演奏会
2013年12月3日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて
午後7時から、ザ・シンフォニーホールで、日本センチュリー交響楽団の187回定期演奏会を聴く。今日の指揮者はスペインを代表する名匠ヘスス・ロペス=コボス。「ス」で韻を踏んだ(?)粋な名前(??)の指揮者である。スペインは、器楽演奏などにはパブロ・カザルス(チェロ。晩年は指揮者としても活躍))、ナルシソ・イエペス(ギター)など世界最高と謳われた名手も多く(特にクラシックギターでは他国の追随を許さない)、作曲家にもファリア、アルベニス、グラナドス、ロドリーゴ、モンポウなど大物がいるが、指揮者に関しては、ヘスス・ロペス=コボスとラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスの二人が突出した存在で、他に巨匠クラスはおらず、指揮者大国というわけではない。スペインの若手指揮者で、京都市交響楽団に客演したパブロ・ゴンザレスがおり、彼はなかなかの実力者であると思われる。
曲目は、レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3番、レスピーギの交響詩「ローマの噴水」、ファリアのバレエ音楽「三角帽子」。
安めのチケットを買ったら、1階席の最前列であった。最前列は演劇なら特等席であるが、クラシック音楽の場合、指揮者の動き、特に手の動きがほとんど見えず、音響もオーケストラ奏者に近すぎてバランスが悪いため、安い値段で売られることがある。場合によっては発売すらされない。
だが、そこは世界に名高いザ・シンフォニーホール。視覚的には今一つであったが、響きは最前列であってもバランス良く響く。
ロペス=コボスの指揮であるが、極めて丁寧であり、澄み切った美しい響きをセンチュリー響から引き出す。立体感もあり、極上のサウンドだ。
レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3番は弦楽のみの作品。バロック以前の作曲家がリュート(ギターの先祖のようなもの)のために作曲した作品の主題を基にオーケストラのために書いたものである。
ロペス=コボスは韻を踏んだ(??)風流な名前(???)の通り、風通しの良い、雅やかな演奏を展開する。
レスピーギの交響詩「ローマの噴水」。川の源流のように澄み切った音をロペス=コボスはセンチュリー響から掬い上げる。繊細な演奏であり、強弱の付け方も細やか且つ自然である。
メインであるファリアのバレエ音楽「三角帽子」。ソプラノの歌が入る曲が2曲あり(そのうち1曲は作曲者の指定で、舞台袖で歌い、姿は見せない)福原寿美枝が歌う。
「三角帽子」はストラヴィンスキーの作風に影響を受けていることがよくわかり、変拍子も多用される。ただ、旋律や響きは紛れもないスペインのものである。第1曲はオーケストラ団員による手拍子と掛け声付きである。
ファリア自身も他の作曲家の作風に影響されすぎたという自覚があったのか、ベートーヴェンの交響曲第5番の冒頭を敢えてパクる場面もある。
ロペス=コボスの指揮であるが、やはりスペインものは十八番、音の美しさとスペイン的な土俗感を止揚して、ローカル且つ普遍的という高度な技を成し遂げる。やはり世界的な指揮者にお国ものを振らせると、第一級の音楽が生まれることを再確認する。センチュリー響もパワフルな演奏で、ロペス=コボスの指揮に応え、福原寿美枝の歌も表情豊かで良かった。
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