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2018年3月21日 (水)

コンサートの記(365) ジャンルイジ・ジェルメッティ指揮 京都市交響楽団第621回定期演奏会

2018年3月17日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第621回定期演奏会を聴く。今回の指揮者はイタリアの名匠、ジャンルイジ・ジェルメッティ。

1945年ローマ生まれのジェルメッティ。イタリア国内でセルジュ・チェリビダッケ、フランコ・カラーラに学び、ウィーンではハンス・スワロフスキーに師事。シュトゥットガルト放送交響楽団の常任指揮者時代に注目される。特にロッシーニのオペラを得意としており、若い頃はレコーディングも行っていてソニーに録音したロッシーニの歌劇「泥棒かささぎ」などは絶賛された。ただ、その後はチェリビダッケの弟子ということもあってかレコーディングには消極的である。シエナのキジアーナ音楽院とローマ・サンタ・チェリーチア・アカデミーで教師としても活躍。門下に三ツ橋敬子や園田隆一郎がいる。

曲目は、ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲、ドヴォルザークのチェロ協奏曲(チェロ独奏:ルイジ・ピオヴァノ)、ラヴェルの「道化師の朝の歌」、「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「ボレロ」。ラヴェル作曲の3曲は途中で拍手をしないで欲しい旨がアナウンスされている。

プレトークでジェルメッティは「こんにちは」と日本語で挨拶をする。京都コンサートホールのスピーカーはアナウンス用のものしかなく、今日は通訳の方が早口だったので、何を言っているのか上手く聞き取れない。ただ、ラヴェルの3曲は組曲的な解釈で演奏することはわかった。

コンサートマスターは渡邊穣。渡邊穣は今回の定期演奏会をもって退任予定である。フォアシュピーラーは泉原隆志。第2ヴァイオリンの客演首席としてザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団コンサートミストレスの赤松由夏が入る。

ジェルメッティの十八番であるロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲。この曲では京響の各奏者の技術の高さが光った。ジェルメッティの設計が適切であるため、京響の奏者も存分に力を発揮出来るのだろう。

ドヴォルザークのチェロ協奏曲。ソリストのルイジ・ピオヴァノは、ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の首席チェロ奏者でもある。イタリアのペスカーラ生まれ。スイスのメニューイン国際音楽アカデミーで学び、パリのヨーロピアン音楽院でも学位を取得。イタリアのフレンターノ夏の音楽祭の芸術監督を務めるほか、自身が結成したカンパニア室内オーケストラの指揮者としても活動しているという。

ピオヴァノはイタリア人だけに朗々としたチェロを予想したのだが、思いのほか渋くタイトなチェロを奏でる。
ジェルメッティの指揮はエネルギー重視。縦の線が合っているのかどうか微妙な場面も比較的多いのだが、それを補って余りある情報と音楽のパワーに溢れている。

ピオヴァノのアンコール演奏は、「イタリア・アヴルッツォ地方の子守歌」。途中からピオヴァノの歌(ヴォカリーズ)も飛び出した。

ラヴェルの「道化師の朝の歌」、「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「ボレロ」。「ボレロ」は通常とは異なり、スネアドラムを3台使用しての演奏である。
ジェルメッティの音楽性が持つ活気と情熱、鮮やかな色彩感が発揮された演奏となる。ラヴェルの情熱と狂気が炙り出された「道化師の朝の歌」、上品な歌と響きが印象的な「亡き王女のためのパヴァーヌ」、そしてアタッカで開始された「ボレロ」ではラヴェルの音楽の多彩さと斬新性がくっきりと浮かび上がる。なお上手に置かれた2台目のスネアはヴァイオリンが入るところから、下手の3台目のスネアはトランペットの開始と同時に鳴り始め、ハイな状態をいや増しに増す。ジェルメッティの演出力も光る演奏会となった。



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