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2018年4月 7日 (土)

観劇感想精選(240) 国立文楽劇場 第106回文楽公演午後の部 「粂仙人吉野花王」&「加賀見山旧錦絵」

2007年4月12日 大阪・日本橋の国立文楽劇場にて観劇

大阪・日本橋(にっぽんばし)の国立文楽劇場で、第106回文楽公演午後の部、「粂仙人吉野花王(くめせんにんよしのざくら)」と、「加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)」を観る。
「粂仙人吉野花王」は、有名な久米仙人の話である。全五段からなるが、今日は吉野山の段のみが乗船される。
聖徳太子の兄ともいわれる粂仙人は、吉野の滝に龍神龍女を閉じこめ、干魃を起こし、それを帝と太子の不徳によるものだとして退位させようと企んでいる。それを察した朝廷は花ますという女を送る。花ますは久米仙人を誘惑して泥酔させ、滝に張られた注連縄を切って龍を天に昇らせる。果たして日照りは収まり、朝廷は権威失墜を免れるのである。
粂仙人を誘惑し、髪を振り乱して注連縄を切る花ますの姿は凛々しくも艶やかだ。また粂仙人の二人の弟子(大伴坊と安曇坊)のコミカルさも最高だ。

「加賀見山旧錦絵」は文楽作品の中でも特に有名であり、「女忠臣蔵」の俗称でも知られる。加賀藩のお家騒動をモチーフにした十一段からなる作品。今日もそうだったが、現在では後半の四段のみが上演されることが多い。
時は室町(ということになっている)。多賀家(加賀藩をもじったもの)では跡継ぎ騒動が起きようとしていた。局の岩藤は花若を世継ぎにしようとしていたが、足利将軍家からの書状は花若の兄を跡継ぎとして認めるというものであった。その書状は岩藤とともにお家乗っ取りを狙う弾正によって握りつぶされたが、岩藤は陰謀の密書を落としてしまい、中老の尾上にそれを拾われたことで悪事が露見するのを怖れる。
鶴岡八幡宮への参拝の折、岩藤は尾上を散々にいたぶる。悪事が露見する前に尾上を多賀家から追い出そうというのである。屈辱の余り尾上は自害、尾上の侍女であるお初は主の仇である岩藤を討とうと決意する。
江戸時代に書かれたものだけに、少々展開が回りくどいが名作であった。作品自体にのめり込んでしまい、余計なことは気にならなかった。
それにしても文楽の表現のバリエーションの多彩さとアイデアの豊富さには圧倒されてしまう。文楽を生み出した江戸時代の日本人の知的水準の高さに、改めて感心する。

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