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2018年4月15日 (日)

コンサートの記(373) ダミアン・イオリオ指揮 京都市交響楽団第622回定期演奏会

2018年4月13日 京都コンサートホールにて

午後7時から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第622回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は初来日となるダミアン・イオリオ。

イタリア人とイギリス人の間に生まれたダミアン・イオリオ。曲目は、彼が生まれ育ったイタリアを代表する作曲家であるレスピーギのローマ三部作。ローマ三部作を一度に演奏する場合は、最もドラマティックな「ローマの松」をトリに置くことが多いのだが、今回は、作曲されたのと同じ「ローマの噴水」、「ローマの松」、「ローマの祭」の順で演奏される。

イオリオはイギリスのロイヤル・ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージックとアメリカのインディアナ大学で音楽を学び、ヴァイオリン奏者としてキャリアをスタート。デンマーク国立放送交響楽団のヴァイオリン奏者を務めた後、サンクトペテルブルク国立音楽院で指揮を学び、欧米各地のオーケストラに客演、オペラでも活躍。オペラ指揮者としては出自をたどるようにイギリス、イタリア、ロシアの作品を得意としているようである。ロシアのムルマンスク・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督兼首席指揮者を経て、現在は英国のナショナル・ユース・ストリング・オーケストラの音楽監督とミルトン・キーンズ・シティ・オーケストラの音楽監督を務めている。ポストから見ると特筆すべきことはないようである。今後は、パリ・オペラ座でムソルグスキーの歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」を指揮する予定があるようだ。

プレトークに登場したイオリオは、自分がローマで育ち、現在はイタリア北部に住んでいること、ローマ三部作で描かれた場所によく行ったことなどを話す。更にレスピーギの特徴として若い頃にサンクトペテルブルクの劇場(現在のマリインスキー劇場の前身)でヴィオラ奏者として働いており、ロシアの音楽に影響を受けたということを挙げる。そのためレスピーギの音楽にはロシア音楽の影響が感じられるという。「どこかは明かしませんが」とイオリオは言ったが、例えば「ローマの祭」の主顕祭にストラヴィンスキーからの影響を聴き取るのは簡単である。
イオリオは独特の編成についても語り、マンドリンやラチェット(ガラガラと鳴る楽器)、特殊な打楽器、ピアノしかも連弾であることなどを紹介する。

レスピーギは1879年生まれであるが、1880年前後の生まれのイタリアの器楽作曲家はイタリア国内で特別視されているという。レスピーギの他にカゼッラやマリピエロなどがいるが、レスピーギ以外は忘れられた人が多いとイオリオは語る。イタリアではなんといってもオペラ作曲家が重視されるということも大きいが、政治的な問題もあり、ムッソリーニと対立したマリピエロなどは作品自体が抹消されたような状態になったそうである。

今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。今期の京都市交響楽団は、少なくとも今のところはコンサートマスターは泉原一人体制で行くようで、尾﨑もアシスタント・コンサートマスターから変更なしである。第2ヴァイオリンの首席も空位のままで今日は首席客演として白井篤が入る。
今日は編成が特別ということで客演奏者が多い。打楽器に7人が加わった他、ホルンには元京響奏者で現在は日本センチュリー交響楽団首席ホルン奏者の水無瀬一成が参加し、オルガンには関西ではお馴染みの桑山彩子が加わる。「ローマの祭」のマンドリン独奏は大西功造。

交響詩「ローマの噴水」。ローマ三部作は今年に2月にフェスティバルホールでアンドレア・バッティストーニ指揮大阪フィルハーモニー交響楽団による演奏を聴いたばかりだが、レスピーギを演奏するには明るい音色を発する京響の方がずっと向いている。イオリオは明快なだけでなく洒落た音色を京響から引き出す。立体感も抜群であり、京都コンサートホールの音響も演奏にプラスに働く。

交響詩「ローマの松」。イオリオは輝きよりも浮遊感を重視。レスピーギが印象派の影響を受けていることがよくわかる。京響は音の輝き、迫力、バランス全てが上質。レスピーギを演奏するには理想的な響きを奏でていた。

「ローマの松」を聴いたらコンサートが終わりというイメージがあるので、続きがあるのが不思議だが、トリは交響詩「ローマの祭」。イオリオと京響は情感豊かな演奏を展開。ベルリオーズやリムスキー=コルサコフと並んで三大オーケストレーションの名手に数えられるレスピーギだが、本当に情景が目に見えるような巧みな描写が音によって繰り広げられた。

ローマ三部作は3曲通してもCD1枚に収まってしまうため、それだけで演奏会を行うと少し短い。ということでなのかどうか今回はアンコール演奏がある。同じくイタリアの作曲であるポンキエッリの「ジョコンダ」より“時の踊り”。愛らしさ、荘重さ、熱さを兼ね備えた演奏であった。



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