コンサートの記(374) 「漆原朝子のウィーン紀行」2007
2007年6月7日 大阪・淀屋橋の大阪倶楽部4階ホールにて
大阪へ。午後7時より、大阪倶楽部4階ホールにて、漆原朝子のヴァイオリン、三輪郁のピアノによる室内楽コンサート「漆原朝子のウィーン紀行」を鑑賞。
ヴァイオリンの漆原姉妹の妹である漆原朝子は1966年生まれ。東京藝術大学附属高校、東京藝術大学に学び、ジュリアード音楽院に留学。1988年に東京でデビュー。同年秋にはニューヨークでリサイタルを行い、絶賛されている。
年を取ってもなお……、いやいや、長いキャリアを誇りながらもチャーミングな容姿で人気の漆原朝子だが、得意レパートリーは、シューマン、ブラームス、シューベルトなど渋めである。高音の煌めきよりも、低音の豊かさが魅力のヴァイオリニストである。
「漆原朝子のウィーン紀行」というタイトル通り、ウィーンで活躍した作曲家の作品を並べたプログラム。モーツァルトの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」K.376(モーツァルトの時代には、ヴァイオリン・ソナタの主役はまだピアノだったのである)、シューベルトのヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第2番、ウェーベルンのヴァイオリンとピアノのための4つの小品、クライスラーの「愛の悲しみ」、シューベルトの「幻想曲」D.934が演奏される。ウェーベルンが入っているというのが渋い。
会場となった大阪倶楽部は、大正13年(1924)竣工の名建築(国登録有形文化財)。大阪倶楽部は、大正時代に英国風の本格的社交クラブとして創設されている。会員制であり、普段は非会員は建物に中に入ることは出来ないのだが、今回は特別に入ることが出来る。ただし2階、3階は立ち入り不可。
4階のホールは、京都芸術センター(旧・明倫小学校)の講堂内によく似た作りである。
漆原のヴァイオリンはモーツァルトには余り向いていないようで、煌びやかなモーツァルトは味わえない。逆に三輪郁のピアノはモーツァルトが演奏が最も良かった。
モーツァルト以外の曲はいずれも優れた演奏。特にシューベルトの2曲は漆原の解釈の深さが感じられる秀演であった。
漆原朝子は可愛らしい顔をしているが、ひとたびヴァイオリンを構えると芸術家の顔に変貌する。それが印象的であった。
アンコールは2曲。いずれもクライスラーの作品で、「ウィーン風小行進曲」と「愛の喜び」が演奏された。
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