コンサートの記(379) 沼尻竜典指揮 京都市交響楽団 「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」2018 オープニングコンサート
2018年5月4日 びわ湖ホール大ホールにて
今年から始まった「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」まずは大ホールで、沼尻竜典指揮京都市交響楽団によるオープニングコンサートがある。午前11時15分開演。
びわ湖ホールの音楽監督である沼尻竜典は、近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018のプロデューサーでもある。昨年まではびわ湖ホールでラ・フォル・ジュルネの大津公演が行われていたが、金沢に次いで大津も独立、新たにびわ湖ホールを中心とした音楽祭を立ち上げた。今年は沼尻指揮京都市交響楽団と大植英次指揮大阪フィルハーモニー交響楽団が軸となり、有名ソリスト達が独自色の濃いリサイタルを散りばめていくという構成である。
オープニングコンサートの曲目は、ソプラノの中村恵理が独奏を務めるグノーの「ロメオとジュリエット」より“私は夢に生きたい”とジーツィンスキーの「ウィーン、わが夢の町」、そしてドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」である。上演時間約1時間の公演。
独唱者の中村恵理は、近年ヨーロッパでの評価を高めている歌手。兵庫県出身。大阪音楽大学、同大学院、新国立劇場オペラ研修所を経てオランダでも学ぶ。2008年にイギリスのロイヤル・オペラにデビュー。2010年からはウォルフガング・サヴァリッシュが長年総監督を務めたことでも知られるバイエルン国立歌劇場の専属歌手として6年に渡って活躍。2016年にはウィーン国立歌劇場デビューも果たしている。
グノーの「ロメオとジュリエット」より“私は夢に生きたい”。響きが良いことで知られるびわ湖ホール大ホール。京都市交響楽団の立体感をともなった緻密なアンサンブルを聴き取ることが出来る。中村恵理の歌声はパワフル。残響が長いので耳にはビリビリとした感じで伝わってくるが、声の美質はよくわかる。
演奏終了後、沼尻は、マイクを片手に「おはようございます」の挨拶(コンサートで聴衆に向かって「おはようございます」を使うことは稀である)の後で、音楽祭のタイトルが覚えにくいというのでお客さんと共に唱和。「これで覚えて貰ったと思います」と語る。『私は夢に生きたい』は、音楽祭の今年のテーマとなっているが、「昨今、『そんなこと言ってないで稼げることをしなさい』という風潮があるように感じますが、そこに逆らうように敢えて付けた」そうである。今日の沼尻は全曲ノンタクトでの指揮であった。
ジーツィンスキーの「ウィーン、わが夢の町」。近年、聴く機会が増えている曲でもある。中村の朗らかな歌唱と、京響のグラデーション豊かな伴奏が耳を楽しませてくれる。
ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は、最近では新たなる旅立ちの折によく取り上げられる。今回も「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」の船出を祝っての演奏である。
午前中から聴くような曲ではないように思えて、余り集中出来なかったが、きちんと整った演奏であることは聴き取れた。ただ、沼尻竜典の指揮ということで特別な面白さを感じるということはない。沼尻はそうしたタイプの音楽家ではない。
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