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2018年5月10日 (木)

コンサートの記(383) 「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」2018 かがり火オペラ パーセル 歌劇「ディドとエアネス」

2018年5月5日 びわ湖ホール湖畔広場にて

午後7時から、湖畔広場(中ホールの外)で、かがり火オペラ、パーセルの歌劇「ディドとエネアス」を観る。指揮は大川修司、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団のメンバーと、笠原雅仁(リュート)、梁川夏子(チェンバロ)、中村洋彦&井上佳代(リコーダー)による演奏。出演は全員びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーで、船越亜弥(ディド)、内山建人(エネアス)、飯嶋幸子(ペリンダ)、藤村江李奈、益田早織、吉川秋穂、溝越美詩、山際きみ佳、鳥越聖人、熊谷綾乃、川野貴之、蔦谷明夫、板東達也、五島真澄、宮城島康。演出:中村敬一。英語上演、日本語字幕付きである。

上演前に演出の中村敬一によるトークがある。「ディドとエネアス」のあらすじを紹介した他、イタリア人は歌を愛し、フランス人はダンスを好んで、イギリス人はシェイクスピアの国ということもあって演劇を愛好するという話をして、そのためもあってイギリス人の有名なオペラ作曲家はパーセルとベンジャミン・ブリテンの二人だけという話をする。
イギリス史上ただ一人といっていい天才作曲家のヘンリー・パーセル。エリザベス朝時代に活躍した作曲家であるが、彼の没後、約200年に渡ってイギリスは大物作曲家不在の国となってしまう。その後、20世紀に入ってから、ベンジャミン・ブリテンがようやく世界的なオペラを書くようになるのだが、ブリテンはパーセルのことを大変尊敬しており、ブリテン自身が編曲を手掛けたブリテン版「ディドとエアネス」も存在するという。

仮設舞台の上に布が一枚垂れているが、これに映像が投影されたり、船の帆に見立てられたりする。

びわ湖ホール館長の山中隆と、「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」のプロデューサーでびわ湖ホールの音楽監督でもある沼尻竜典によるかがり火点灯式の後でオペラスタート。


神話の時代のお話である。トロイ戦争に破れ、ローマを目指しての船旅に出たエアネス王子は嵐に遭い、カルタゴへ流される。カルタゴを建てたディド女王は、アプロディーテーの息子で男前のエアネスと恋に落ちる。だが二人の仲を知った魔女は嫉妬して、精霊に化けてエアネスの前に現れ、カルタゴを離れてローマに向かうよう命じる。ディドからも精霊の命令に従うよう説得されたエアネスはためらいつつもイタリアへと向かい、元々気鬱気味であったディドは自ら命を絶つ。

バロック時代のオペラということもあってあらすじは平易である。パーセルの音楽は「天才」の評価にふさわしい優れたものだ。古楽だけにドラマ性に富んでいるというわけにはいかないが、ラストの暗い響きなどには時代を超越したものがあるように思う。
中ホールがすぐ背後にあり、「俺だったら中ホールの照明を使うなあ」と思っていたが、中村敬一もラストで中ホールの明かりを使っていた。

今よりも神の存在がずっと大きかった時代の話。人間は神の前ではちっぽけな存在でしかなかったが、ある意味、「神のせい」に出来た時代でもある。神という存在に後付けされた免罪符とでもいうべきか。人間の意識が肥大化し、神が殺害されて全ての事柄が個人に結びつくようになった今に比べると、この時代は別の種類の豊かさに満ちていたとも言える。

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