コンサートの記(386) 森麻季ソプラノリサイタル2008京都
2008年5月11日 京都コンサートホールにて
午後2時30分から京都コンサートホール大ホールで、ソプラノの森麻季のリサイタルを聴く。ピアノ伴奏は山岸茂人。
華やかな容姿と伸びやかな高音で人気のソプラノ歌手、森麻季。東京藝術大学と大学院を卒業後、ミラノとミュンヘンに留学。現在もイタリアとドイツでの活躍を続けている。
プログラムは、成田為三の「浜辺の歌」、石川啄木の短歌に越谷達之助がメロディーをつけた「初恋」、山田耕筰の「からたちの花」と「母の声」という日本人作曲家の作品に始まり、山岸茂人のピアノ独奏によるブラームスの間奏曲イ長調を挟んで、リヒャルト・シュトラウス、マーラー。
後半は、オルフ、ベルク、カゼッラ、ファブリツィオ・カルローネ、山岸のピアノソロによるグラナドスの組曲「ゴイェスカス」より「嘆き、または夜鳴きうぐいす」を挿み、ドニゼッティ、ラフマニノフの作品が並ぶ。
日本人の作品が並んでいることでわかりにくくなっているが、実はドニゼッティを除いて、全て20世紀以降に初演された歌ばかりである。ドニゼッティも当初は予定になく、ストラヴィンスキーが歌われる予定だった。さりげなく意欲的なプログラミングである。
このうち、ファブリツィオ・カルローネの「私の人生は海」は森麻季の依頼によって作曲されたものである。ちなみに、ファブリツィオ・カルローネは森麻季の旦那さんである。森麻季のブログで発表されているように、森は現在妊娠中であり、お腹がちょっと出ているのがわかった。
「浜辺の歌」は小さめの声で始まり、「京都コンサートホールは声楽リサイタルには広すぎるのかな?」、「森麻季は、春先に体調を崩したというからコンディションが万全でないのかな?」などとも思ったが、ホールの響きを確認しつつ、弱めに入っただけのようで、声を張り上げると、コンサートホール内の空気が震えるのがはっきりわかるほど豊かな声が拡がる。
高音が伸びるし、コロラトゥーラの技術も高いのでソプラノとして活躍している森だが、声自体は落ち着いていて、メゾ・ソプラノに近い。
モーツァルトも名もシューベルトの名もヴェルディの名もないというプログラム。リヒャルト・シュトラウスの名はあるが、歌われるのはオペラの曲ではなく、最晩年の「四つの最後の歌」より「眠りのとき」と「夕映えのとき」という“神品”と評されるが派手さはない曲。そして新ウィーン学派であるベルクの「ナイチンゲール」が入っているなど、エンターテイメントではなく、本格派指向のリサイタルであった。
マーラーの交響曲第4番第4楽章よりの「天上の生活」と、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」が特に印象的な出来。
アンコールは3曲。プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」より“ねえ、私のお父さん”、同じく「ラ・ボエーム」よりムゼッタのワルツ“私が街を歩けば”、最後は「千の風になって」が歌われた。
自信満々のイケイケねえちゃんの歌であるムゼッタのワルツでは、森も自信満々の女性を演じて見せた。こういうのも楽しい。
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