楽興の時(23) ジモン・ルンメル&伊藤えり 「浅酌低唱 笙と微分音ハーモニカの饗宴」
2018年7月14日 荒神橋のゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川にて
荒神橋のゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川へ。午後6時からドイツの若手作曲家であるジモン・ルンメルが作成した新楽器・微分音ハーモニカと東京楽所(とうきょうがくそ)所属の伊藤えりの演奏する笙のジョイントコンサート「浅酌低唱 笙と微分音ハーモニカの饗宴」を聴く。入場無料。
一週間前のトークイベントにも参加したジモン・ルンメル。1978年生まれ。ケルンでピアノと作曲、デュッセルドルフで美術を学び、様々なアイデアによる楽器を生み出している。
伊藤えりは東京藝術大学卒業後、武満徹作曲の雅楽演奏などで知られる東京楽所に参加。神社仏閣での笙奉納演奏、国内外でのワークショップなどでも活躍している。
ルンメルと伊藤が対面しての演奏。微分音ハーモニカであるが、机の下にふいごが二つ。左右の膝で交互にふいごに触れることで空気を送り込む。自転車を漕ぎ続けているような格好だ。ビニールの管を通して口からも空気を送り込む。机の上には鍵盤のようなものが並んでおり、これを抑えることで音程や和音を生み出す。鍵盤からはビニールチューブが伸びていて、試験管のようなものに繋がっている。試験管のようなものは糸で天井付近の板から釣り下げられている。詳しい仕組みや原理はちょっとわからない。
演奏されるのは、微分音ハーモニカと笙による和音を基調とした40分から60分の音楽。プレトークでルンメルは「和音が花のように咲いていく」という説明を行ったが、確かに花が咲き綻びていく様を見つめるような趣がある。音階らしい音階はラスト付近まで登場せず、ひたすら高音の和音が降り注いでくる。ドイツ的な「低音を築いて高音を乗せてレンジを広く」という発想がないため、アジア的な音楽性を感じたりもする。
微分音ハーモニカであるが、「高音しか出ないオルガンではないのか」という捉え方もあるだろうし、新しい楽器であると断定は出来ないだろう。
続いて、ルンメルが作った小さな吹奏楽器を聴衆数名に配っての短い作品の演奏。聴衆に配られた楽器は単音しか出ない。様々なところから単音が出て和音になって溶けていくという音響は面白いように思う。演奏終了後、ルンメルは参加してくれた人達を冗談交じりに「キョウト・ウインド・オーケストラ」と言って讃えた。
| 固定リンク | 0
コメント