コンサートの記(405) 高関健指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2018「Bravo! オーケストラ」第1回“華麗なるバレエの世界”
2018年7月1日 京都コンサートホールにて
午後2時30分から京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2018「Bravo! オーケストラ」第1回“華麗なるバレエの世界”を聴く。昨年度までのオーケストラ・ディスカバリーは午後2時開演だったが、今回からマチネーの定期演奏会と同じ午後2時30分開演に改められている。今日の指揮者は京都市交響楽団常任首席客演指揮者の高関健。今回は桧垣バレエ団との共演で、ステージの奥部を上まで上げた二段舞台での上演となる。ということで今日はポディウム席、ステージ横席共に販売されておらず、最前列と2列目も奥で行われるバレエが見えないため空席となっている。ナビゲーターはガレッジセール。
演目は前半が、チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」から「小序曲」~「行進曲」~「子どもたちの小ガロップと親たちの登場」、チャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」から「情景」と第2幕「オデットと王子のグラン・アダージョ」。後半が、プロコフィエフのバレエ「シンデレラ」ハイライト。
桧垣バレエの出演者は、プリマバレリーナの小西裕紀子を始め、今井大輔、林杏香(はやし・きょうこ)、中尾圭子、蘆原絵莉子、中井高人(たかと)、福島元哉、榎本心、和田健太郎、中谷美咲、大久保真貴子ほか。
今年度はチケットの売れ行きが良く、油断して買うのが遅れたため、2階サイド席の最もステージから遠い場所の席になった。以前だったら音の通りが悪い席だったが、舞台をすり鉢状にして後部の反射板代わりにすることで、音響の改善に成功したようである。ステージからは遠いが音には問題はない。
今日もコンサートマスターは客演で、植村太郎が入る。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーは尾﨑平が務める。第2ヴァイオリンの首席も客演の小宮直に託された。
まずは「くるみ割り人形」。京響の好調は続いており、エレガントな響きが聴き手を楽しませてくれる。
桧垣バレエ団は予想していたよりも本格的な上演。後方ステージ上は賑やかで、多彩な踊りが展開された。
上演終了後、マイクを手にしゃがれた声で自己紹介。昨日まで風邪を引いており、今日治ったばかりだという。
ガレッジセールの二人が登場し、ゴリが「今日、お金掛かってるから京響の皆さんの給料が出なくなるなんてことはないでしょうか?」と冗談をいう。
その後、ガレッジセールと高関の3人がいったん退場して後方ステージに上がる。ゴリは「NGKより眺めが良い」といって、川ちゃんに「そんなこと言っちゃ駄目でしょ」とたしなめられていた。その後、小西裕紀子が後部ステージ上に呼ばれ、ガレッジセールの二人からの質問に答えていく。小西、それからその後に登場した小学6年生の団員二人は止まっている時も両つま先を外側に向けたバレエのポーズであり、いつでも踊りに入ることが出来るようこれを常に保つ必要があることを述べる。「オーケストラの皆さんは楽器を使いますが、私たちは体を楽器にして」常に磨き続けることを心がけているそうである。バレリーナは公演中の待ち時間も長いのだが、いつ本番になってもすぐに対応できるよう体を最善の状態に保ち続けているそうだ。
「白鳥の湖」。小西裕紀子と今井大輔のパ・ド・ドゥである。ダイナミックさと華麗さを併せ持ったバレエが展開される。高関指揮の京響も万全の演奏を聴かせた。
後半、プロコフィエフのバレエ「シンデレラ」ハイライト。この曲ではガレッジセールの二人が交互にナレーションを担当する。元々俳優志望だったゴリの方がナレーションは上手い。川ちゃんはちゃんと読もうとする気持ちが強すぎた結果、文を短く切りすぎて却って伝わりにくくなっていた。
物語性が強いということで、小西裕紀子によるユーモア溢れる演出が生きている。舞踏会に妖精が現れるところではストップモーションを採用。意地悪な継母(演じるのは蘆原絵莉子)とその娘達の踊りでは、若い娘達には男達がすぐに支えにくるのに、継母には誰も寄ってこないため、継母が床を踏みならして「誰か来なさい!」と強制する場面が加わっていた。継母はコミックリリーフ的な扱いであり、皆で客席中央通路に出て紙吹雪を撒くシーンでも一人でいつまでも紙吹雪を投げ続けるというわがままぶりを発揮して笑いを誘っていた。バレエのユーモラスなシーンはサイレント映画に通じるところがあり、観ていて、「ああ、チャップリンだ、バスター・キートンだ、ヒッチコックだ」と様々な無声映画を連想した。
高関指揮の京響もシャープで所々にわさびを利かせた演奏を展開し、プロコフィエフを聴く楽しみを十全に味わわせた。
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