コンサートの記(422) 広上淳一指揮京都市交響楽団大阪特別公演2018
2018年9月2日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて
午後2時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、広上淳一指揮京都市交響楽団の大阪特別公演を聴く。
オール・ロシア・プログラムで、プロコフィエフの組曲「3つのオレンジへの恋」から行進曲&スケルツォ、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏:小林美樹)、チャイコフスキーの交響曲第4番が演奏される。
今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。第2ヴァイオリン首席には客演の有川誠が入る。チェロ首席にも客演のルドヴィート・カンタが入った。
プロコフィエフの組曲「3つのオレンジへの恋」より行進曲&スケルツォ。
京響は燦々と輝くような音色を発し、広上のキビキビとしたリードが生きる。鋼のように強靱なフォルムとメカニックがプロコフィエフの面白さを際立たせる。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調。
ソリストの小林美樹(みき)は、1990年生まれの若手ヴァイオリニスト。アメリカのサンアントニオに生まれ、4歳の時にヴァイオリンを習い始める。2006年にレオポルド・モーツァルト国際ヴァイオリンコンクールで審査員特別賞を受賞。2011年にはポーランドのヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで2位になっている。桐朋女子高校音楽科を経て桐朋学園大学ソロディプロマコースを卒業。その後、ロームミュージックファンデーションの全額奨学金により、ウィーン私立音楽大学でも学んでいる。
ピンク色のドレスを着て登場した小林は長身の女性である。小柄な広上は、彼女の肩の部分までの身長しかない。
小林のヴァイオリンはスケールが大きく、技術力も確かである。少し単調なヴァイオリンなのが気になるところだ。時折、海老反りになってヴァイオリンを弾く小林。見せ方を知っているという印象を受ける。
広上指揮の京響も堂々としたシンフォニックな伴奏を聴かせる。
小林のアンコール演奏は、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番よりジーク。華麗な演奏だったが、案外、記憶に残りにくい類いのものだったようだ。
チャイコフスキーの交響曲第4番。第1楽章では、チャイコフスキーの嘆きにさほどのめり込まず、俯瞰的なアプローチを展開する。客観視された悲劇性が音によって描かれることで却って深刻さが増す。
第2楽章でも第3楽章でも音色は明るめだが、その背後に陰鬱な表情があることを示唆させる演奏である。ちなみに広上は第3楽章をノンタクトで振り、応援団長がやる「フレーフレー」のような仕草をしていた。
第4楽章も音の見通しが良く、グロテスクなサーカスのような音楽が舞台上で繰り広げられる。あたかもロシア版の幻想交響曲のような描き方である。ラストで広上はギアを上げ、悪魔の高笑いのような音像を築く。文字通りデモーニッシュな解釈である。
演奏終了後、広上は、「一つだけ。皆様のご健康とご多幸を祈っております」と言って、モーツァルトのディヴェルティメントニ長調 K.136から第2楽章の演奏を行う。
広上と京響が共に十八番としているモーツァルト、の割には演奏会にプログラムに乗る機会は決して多くないが、透明で雅やかでチャーミングな理想的な出来となった。
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