楽興の時(24) 真宗大谷派岡崎別院「落語とJAZZの夕べ」2018
2018年10月3日 左京区岡崎の真宗大谷派岡崎別院にて
午後7時から、真宗大谷派岡崎別院本堂で、「落語とJAZZの夕べ」を聴く。いつもは空いている催しのようだのだが、今日はどうしたわけか超満員。本堂に入りきれないほどの人が集まった。
司会を務めるのは仏教イベントでは余り見かけないような可愛らしい女性であったが、フリーアナウンサーやタレント、女優などをしていて、現在放送中の朝の連続テレビテレビ小説「まんぷく」にも、主人公の今井福子(安藤サクラ)が務めるホテルのフロント係役として出演しているという。「まんぷく」は録画しているので見直したところ、確かにそれとわかる女性が出演していた。
第1部がJAZZの演奏会。ヴォーカルの麻生優佳、アルトサックスの本並ともみ、キーボードの須田敏夫、ダブルベースのマキアキラ、ドラムスの辻川郷という編成。
全10曲が演奏され、そのうち6曲にヴォーカルの麻生が参加する。
曲目は、「It's only a paper moon」、「Autumn leaves(枯葉)」、「星に願いを」、「Caravan」、「ムーンリヴァー」、「Smile」、「Fly me to the moon」、「中国行きのスロウボウト」、「ムーンライトセレナーデ」、「Moanin'」という超王道レパートである。
「It's only a paper moon」が本並ともみを中心としたサックスカルテットで演奏されてスタート。2曲目の「枯葉」から「Fly me to the moon」までは麻生優佳のヴォーカルが入る。伴奏が合ってるのか合ってないのかよくわからないところがあったりしたが、楽しむには十分な水準である。客席は白髪の人中心で、音楽にうるさい人も余りいないようであるし。
反応が本当にNHKの公開収録のそれそのままであり、お年の方は本当にああした反応を見せるようである。
第2部が落語、四代目桂塩鯛(しおだい)が登場する。岡崎別院本堂内には高座がないため、ビールケースを三つ重ねたものを7つほど置き、上に板を敷いて特設の高座とした。
桂塩鯛は、昭和33年、京都市生まれ。立命館大学中退後に桂朝丸(現・桂ざこば)に入門し、現在はざこばの筆頭弟子である。若い頃にABC落語・漫才新人コンクールで最優秀賞を受賞したことがあり、平成10年に文化庁芸術祭優秀賞を受賞している。
塩鯛は、まず一目でその筋とわかる人が最近いなくなったという話をし、新幹線で組の人(3年1組と冗談を言っていた)と出会った時のことを話す。東京から大阪に帰る新幹線の3人掛けシート、窓側に塩鯛は座っていたのだが、京都から組の人らしき人物が乗ってきた。3人掛けシートの通路側の席には、サラリーマンと思われる人が疲れて寝ていたのだが、組風の男はサラリーマンの足を思いっ切り踏んだため、「お前、なにすんねん! 足踏みよってからに」と怒る。起きていたら、組風の姿を見て遠慮したと思われるのだが、目を開けてすぐに怒鳴ったため、相手の風体に気づく暇がなかったようだ。組風の男はのうのうと「足踏んだからなんやねん?」と返答し、サラリーマンも「なんやねん」と言い返すが、組風の男も「なんやねん」と言い返し、サラリーマンも「なんやねん」と返し続けるが、そのたびの顔色が悪くなっていく。塩鯛が止めに入ろうとしたが、前の席に座っていたおっさんが、「お前、関係ないのになんやねん?」と苦情を言ってきたため、塩鯛も組風の男と前のおっさん二人に延々と「なんやねん」を返して、そのしているうちに新大阪に着いてしまったという話である。
これを枕に、チンピラの「らくだ」を巡る話である古典落語「らくだ」全編上演に入っていく。長屋に住む「らくだ」(役立たずという意味がある)というあだ名の男、卯之助。この男がどうしようもないろくでなしで、3年もの間、長屋の家賃を一度も払ったことがなく、長屋で祝儀を出すことになっても「立て替えておいてくだせえ」と言ったきり、結局、今に至るまで金を払ったことがない。
らくだの親分である脳天の熊五郎がらくだの長屋を訪ねてくる。らくだが寝坊をしていると思ってしばらく話しかけていた熊五郎だが、らくだの体が冷たくなっていることに気づく。どうもフグを食って毒に当たり、死んでしまったらしい。
やはりやくざ者である熊五郎は、長屋の前を通りかかったくず屋を呼び止め、らくだの死を利用して、ただで酒と肴を楽しもうと企てて……。
噺家なので、登場人物の演じ分けが巧みなのは当然なのだが、クシャミやしゃっくりを入れるタイミングが絶妙であり、自然に出てしまったかのように聞こえる。人間の生理現象は意識して出るものではないので、真似るのは難しいのだが、そこは十全のようである。
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