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2018年10月 1日 (月)

観劇感想精選(259) 松竹大歌舞伎「義経千本桜」“道行初音旅”&“川連法眼館” 片岡愛之助、中村壱太郎、市川猿弥ほか@びわ湖ホール

2018年9月23日 びわ湖ホール中ホールにて観劇

午後5時から、びわ湖ホール中ホールで、松竹大歌舞伎「義経千本桜」“道行初音旅”&“川連法眼館”(通称:四の切)を観る。

「仮名手本忠臣蔵」、「菅原伝授手習鑑」と並び、歌舞伎の三大演目の一つに数えられる「義経千本桜」。中でも「川連法眼館」は四段目の終わりということで「四の切」の別名でも呼ばれ、単独で上演されることも多い。今回はその前段である「道行初音旅」と続けての上演が行われる。

出演は、片岡愛之助、中村壱太郎(かずたろう)、市川猿弥、中村寿治郎、上村吉弥(かみむら・きちや)、中村松江、市川門之助ほか。

愛之助の佐藤忠信&狐忠信である。

「道行初音旅」は舞踊が中心になるが、愛之助の忠信は動きに無駄がなく、指先に至るまで神経が宿っている。要所要所で飛ばされる「気」のようなものも効果的で、流石は花形歌舞伎俳優である。
静御前を演じる中村壱太郎も細やかな仕草が印象的で、女形としての実力を感じさせる。
三枚目、トリックスターである逸見藤太を演じる市川猿弥の味も良い。「こんなところで愛之助」、「とっとと寄こせば猿弥」という駄洒落も笑える。

「川連法眼館」。歌舞伎対応劇場ではないということもあってか、川連法眼を演じる中村寿治郎のセリフが少し聞き取りにくかったが、進行の上で支障があるというほどではない。愛之助演じる佐藤忠信の凜々しさと、狐忠信の怪しさとコミカルな部分の演じ分けが見物である。

先代と当代の猿之助が演じる宙乗りありの澤瀉屋バージョンが有名だが、今回は別の版(音羽屋版だと思われる)での上演。途中で佐藤忠信が屋敷の奥に姿を見せる場面はなく、ラストも宙乗りではない。愛之助の狐詞も先代と当代の猿之助ほどではないかも知れないが、ユーモラスで愛嬌があり、惹かれる。親を慕う哀切な場面での表現も巧みであり、外連で見せる澤瀉屋版とここで差別化を図っているように思われる。

壱太郎演じる静御前の仕草も美しく、愛らしい。

義経を演じる市川門之助も堂々としており、貫禄と迫力と存在感があった。

ラストでは狐忠信は宙乗りの代わりに舞台中央やや上手側に聳える桜の木に登る。桜の名所である吉野の、今が盛りと咲く華やかさとすぐに散るという儚さを併せ持つ桜と一体になる忠信の構図が、義経を中心とする登場人物達の運命を象徴しているようでもある。

今日は歌舞伎専用の劇場での上演ではないということもあってか、大向からの声はほとんど掛からず、いつもとは違った雰囲気の中での歌舞伎見物となった。



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