コンサートの記(436) ジャン=マルク・ルイサダ ピアノ・リサイタル2018京都
2018年9月25日 京都コンサートホールにて
午後7時から、京都コンサートホールで、ジャン=マルク・ルイサダのピアノ・リサイタルを聴く。
現役屈指のショパン弾きとして知られるルイサダ。今回はショパンと今年が没後100年に当たるドビュッシー、そしてシューマンの作品を並べたプログラムである。
前半が、ショパンの4つのマズルカ作品49、シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」。後半が、ショパンの「幻想曲」ヘ短調、ドビュッシーの「映像」第1集&第2集。
ルイサダは、1958年、フランスから独立して間もないチュニジアに生まれている。広上淳一とは同い年。2歳の時に一家でフランスに移住し、12歳の時にイギリスのユーディ・メニューイン音楽院に入学。イギリス時代にはメニューイン、ナディア・ブーランジェ、ベンジャミン・ブリテンらの知遇を得た。16歳でパリ国立高等音楽院に移り、卒業後の1983年にディーノ・チアーニ記念コンクールで2位に入賞、1985年のショパンコンクールでは5位に入賞している。日本では教育テレビで放送された「スーパーピアノレッスン ショパン編」の講師としても知名度を上げている。
譜めくり人を置き、常に譜面を見ての演奏。ただ多くの部分は暗譜しており、確実性を求めるために譜面を見ていることがわかる。少し前まではピアニストは暗譜で弾くのが当たり前だったが、最近ではイリーナ・メジューエワなど、常に譜面を見ながら弾くピアニストも増えてきている。
ショパンの4つのマズルカ。独特の奥行きのある音が特徴的で、十分にロマンティックであるがセンチメンタルではなく、「軽み」で聴かせる。
シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」ではロマンティシズムと即興性を上手く融合させたタイプの演奏を聴かせる。
ショパンの「幻想曲」ヘ短調。序奏では浮遊感と沈痛さを統合した響きを奏で、後半の情熱的な展開へと繋げていく。耳や頭でなく、心に直接触れるタイプの演奏である。
ドビュッシーの「映像」第1集&第2集。ショパンやシューマンとは異なり、細やかな音による描写力の高さが特徴的である。抒情と詩情とモダニズムを音の画家のようにルイサダは描く。どれも油絵ではなく淡彩画の趣。日本の漆絵からインスピレーションを得たという「金色の魚」からは異国情緒と光の移ろいを感じ取ることも出来る。
アンコールは3曲。まず、エルガーの「愛の挨拶」。穏やかで愛らしい表現である。
2曲目、ショパンのワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」では、一転して生き生きとして少しコケティッシュでもあるショパンを聴かせる。
3曲目は、リストの「コンソレーション(慰め)」第3番。限りなく透明に近い音色による純度の高いピアニズムを聴かせた。
京都コンサートホールから出ると、満月がホールの上に浮かんでいるのが見える。そのまま月に向かって歩いて帰る。
| 固定リンク | 0
« 春秋山荘観月祭2018 山田せつ子ソロダンス 「月を聴く 竹に舞う」 | トップページ | 観劇感想精選(260) 大竹しのぶ×段田安則×多部未華子 シス・カンパニー公演 ジャン=ポール・サルトル「出口なし」 »
コメント