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2018年10月14日 (日)

コンサートの記(437) 「京響プレミアム スピンオフ ラジオタイムス ~ことばが結ぶシンフォニー~ 西川貴教×大島こうすけ オーケストラコンサート」

2018年10月5日 京都コンサートホールにて

午後7時から京都コンサートホールで、「京響プレミアム スピンオフ ラジオタイムス ~ことばが結ぶシンフォニー~ 西川貴教×大島こうすけ オーケストラコンサート」を聴く。
指揮者は京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一。

日本を代表するシンガーの一人である西川貴教と作曲家・編曲家・ピアニストの大島こうすけが、ラジオDJのようにクラシックとポップスをミクスチャーさせるという趣向のコンサート。
一番高いところまで上げた舞台下手奥の段の上にラジオブースに見立てたものを置き、西川と大島がそこでトークを行う。

曲目は前半が、ラジオタイムスのオープニングテーマである「Timeless Journey」(大島こうすけ作曲)、ホルストの組曲「惑星」より“木星”、西川貴教が歌う「awakening」と「Roll The Dice」のオーケストラ伴奏版。後半が、菰口雄矢のギターソロとオーケストラによる「熊蜂の飛行」(リムスキー=コルサコフ)、そして西川貴教がヴォーカルと務める「Prisoner」、「さよならのあとで」(原曲はヘンデルの「私を泣かせてください」)、「インスタント・アンサー」(モーツァルトの交響曲第25番第1楽章による)の3曲である。

今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。今日はクラリネット首席の小谷口直子が降り番だったようだが、その他の管楽器首席奏者の多くは前後半ともに出演していた。
なお、ニコニコ動画での生配信があるようで、舞台上に本格的なマイクセッティングが施され、テレビカメラも何台も回っている。ポディウムは発売されておらず、2階ステージサイド席の後ろ半分もスピーカーを設置するために空けられている。スピーカーはステージ両脇にも本格的なものが置かれている。

まず「timeless Journey」。余り京響が演奏しないタイプの楽曲であるが、それだけに新鮮ともいえる。

ホルストの組曲「惑星」より“木星”。大島こうすけのリクエスト曲だそうである。宇宙を描いた曲ということで大島は興味を持ったそうだ。中間の部分は平原綾香が「Jupiter」という曲として歌っていることでも有名だが、「ご存じない方のために」とまず西川貴教が「Jupiter」のカバーを歌い。それから「木星」の演奏が行われる。
井上道義の指揮で「木星」を演奏したばかりの京響だが、曲全体の美しさ見通しの良さ、そしてバランスと典雅な雰囲気全て広上の方が上である。
ホルストの組曲「惑星」について広上は、「『土星』という曲があるのですが、暗くて重くて後で鬱になる」と語る。

「awakening」と「Roll The Dice」。「awakening」は西川が以前に出したシングルのカップリング曲だそうだが、「Roll The Dice」は今年の11月に発売される予定の曲だそうで、

西川 「オリジナル発表の前にオーケストラ版を歌う」
大島 「豪華ですね」
ということだそうだ。

「awakening」(作詞:神前暁、作曲:毛蟹)は、三拍子を基調にした楽曲で、広上は例によって指揮台の上でステップを踏んでいた。この曲では、ギタリストの菰口雄矢が参加したのだが、緊張のため、現れてすぐに着座してしまい、西川貴教から「ソリストなので普通は指揮者の方と握手したりするものなんですが」と突っ込まれる。更に広上の方から指揮台を降りて握手することになったため、「馬鹿ですね」と西川に言われていた。演奏終了後もすぐに下手にはけてしまったため、客席から笑いが起こる。
「Roll The Dice」は、ロックナンバーということで、打楽器群が大活躍する編曲となっている。

後半。リムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」は、西川がリクエストした曲である。ちなみに、今日の客層は西川貴教が出ると言うことで、いつもの京都コンサートホールとは異なり、30歳前後の女性がメイン。西川が「熊蜂の飛行を知ってる人」と聞いても反応がなく、クラシックファンはほとんど来ていないことがわかる。
「熊蜂の飛行」の早弾きを菰口雄矢のギターソロと京響とで競うことになるのだが、西川は菰口について、「出来ますかね? 前半の段取り、全て忘れた男ですよ?」
ちなみに、菰口には一度間違うことに千円の罰金が科せられるという。
大島による独特の編曲で演奏が行われる。広上が下手から登場し、指揮台に上がる前に自分から菰口と握手をして笑いが起こる。
西川と大島は舞台袖のモニターで確認していたそうだが、菰口は4回間違えたということで四千円の罰金となるそうである。演奏を終えた菰口に西川が感想を聞くと、「緊張で口の中がパサパサになりました」と返ってきた。

「Prisoner」は大島こうすけが今回の演奏会のために書き下ろした新作。歌詞は山崎あおいが担当しているが、大島は、「悪い女を描いている」と紹介する。作曲に当たっては楽曲の再構築という手法を取ったそうだ。

ヘンデルのアリア「私を泣かせてください」を日本語歌詞にした「さよならのあとで」。山崎あおいの歌詞は、ヘンデルのアリアとは全く違ったものになっている。通常はソプラノによって歌われる曲であり、西川は男性としては声が高い方だがソプラノ同様に歌うには無理なため、メロディーも少しいじっているようだ。

プログラム最後の曲である「インスタント・アンサー」。モーツァルトの交響曲第25番第1楽章をモチーフにしたものである。まずはモーツァルトの交響曲第25番第1楽章を広上と京響が演奏する。カットありの演奏だったが、水準としては見事なもの。ただ、演奏終了後に広上が語ったところでは、全曲を演奏したことは1回しかないそうで、この曲を演奏することも生まれて2度目。モーツァルトの交響曲第25番について広上は「暗い」とだけ語ったが、「モーツァルトという人は、人を楽しませることが大好きな人だったと思うんです。西川さんのように(西川は「???」という顔)。ただとても繊細だった。短調の交響曲は2曲しかないんですが、人を楽しませる心遣いの出来る人が書いた本音のような部分。といっても会ったことないんですけどね」というようなことを言う。
「インスタント・アンサー」は、交響曲第25番第1楽章とは調が違うようである。ト短調という調性は歌いにくいだろう。メロディーも特にモーツァルトをなぞっているわけではない大島独自のものである。昔、シルヴィ・ヴァルタンがモーツァルトの交響曲第40番ト短調を伴奏にした曲を歌っており、それを参考にしたのかと思っていたが、この曲はモーツァルト作曲の部分もかなり変えているため、そういうわけではなさそうである。

西川は、「皆様、本日はこの曲をもって終わり、というわけには参りません」と言って、このコンサートのために作った「Hikari」という曲をアンコールとして歌うことを客席に伝える。西川は広上にも「Hikari」のリハーサルを行った時の感想を聞き、広上は「とても良い曲。美しい。曲だけじゃなくて歌詞も良い。ヒットしそう」というが西川に「ヒットもなにも発売するかどうかも決まってないんですが」と突っ込まれていた。
広上によると、このコンサートのリハーサル中に自身の弟子がとんでもない粗相をしたそうで激怒し、「もうクビだ!」宣言をしたのだが、この曲を聴いている内に気分が落ち着いて許すことにしたそうである。ただ、そのお弟子さんは会場に残ることは出来なかったようで、「今、動画を見てると思います」とのことだった。
歌詞がいいのかどうかは一度聴いただけではわからなかったが、メロディーは優しくて良い感じだったと思う。
拍手は鳴り止まず、最後はオールスタンディングとなる。もっともオールとは書いたが私自身は最後まで立たなかったのだけれど。


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