コンサートの記(441) ヨエル・レヴィ指揮 京都市交響楽団第628回定期演奏会
2018年10月12日 京都コンサートホールにて
午後7時から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第628回定期演奏会を聴く。今日の指揮者はヨエル・レヴィ。
曲目は、モーツァルトの交響曲第32番、ブラームスのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏;ヴィヴィアン・ハーグナー)、バルトークの管弦楽のための協奏曲。
ヨエル・レヴィはルーマニア生まれ、イスラエル出身の指揮者。テル・アヴィヴ音楽院を経てエルサレム音楽院でも学ぶ。イタリアに留学し、シエナとローマでフランコ・フェッラーラに師事。その後、オランダでキリル・コンドラシンに師事し、ロンドンのギルドホール音楽院でも学んでいる。1978年にブザンソン国際指揮者コンクールで第1位を獲得し、クリーヴランド管弦楽団でロリン・マゼールのアシスタントと常任指揮者を務めている。
レヴィの名が一躍上がったのは、アトランタ交響楽団の音楽監督時代である。1988年に就任後、アメリカ国内外で評判となり、日本でも音楽誌に「アトランタの風」というタイトルの音楽エッセイが連載された。ただそれが良くなかったのか、その後は「風と共に去りぬ」状態となり、ヨエル・レヴィの名を聞くことすら日本ではなくなった。ところで今日のソリストのファーストネームがヴィヴィアンなのはわざとなのか? 冗談だけど。
21世紀に入ってからは、ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団と、イル・ド・フランス国立管弦楽団の首席指揮者を務め、2014年からは韓国のKBS交響楽団の音楽監督兼首席指揮者となっている。韓国版NHK交響楽団ともいうべきKBS交響楽団は、かつてのN響のように「知名度は今ひとつだが実力派」の指揮者を見つけるのが上手いため、期待出来るのかも知れない。
プレトークでは、レヴィは自分のことを話すのではなく、聴衆から質問を受けてそれに答えるという形を取る。「ルーマニア生まれ」に関してだが、生まれてから1ヶ月でイスラエルに転居してしまい、それ以降は今に至るまでルーマニアを訪れたことはないので何も知らないそうだ。ただ生まれたのはルーマニアとハンガリーの国境付近で、母親はハンガリー系、イスラエル時代に師事したのもハンガリー系の音楽家ばかりだったそうで、音楽的ルーツには繋がっているかも知れないとのこと。
「なぜ指揮者の道に進もうと思ったのか?」という質問には、「これは自分で決めたのではないのです。両親とも音楽好きで私も幼い頃から音楽好き。私を見た両親が『才能あるんじゃないのか?』と気づいて」レールに載せてくれたようだ。才能に関しては、「上の方から降りてきた」ようだという。
「京響に日本的な要素を何か感じますか?」には、「ジャパニーズテイストが何かわからない」
今日のプログラムに関しては、京都市交響楽団の年間プログラムを見てバルトークの管弦楽のための協奏曲をレヴィが選び、ブラームスのヴァイオリン協奏曲はソリストのヴィヴィアン・ハーグナーが選んだそうだ。
今日はいつもと違い、チェロが上手手前に来るアメリカ式の現代配置(ストコフスキーシフト)での演奏である。
コンサートマスターは客演の豊嶋泰嗣。フォアシュピーラーに泉原隆志。チェロの客演首席にはルドヴィート・カンタが入る。
モーツァルトの交響曲第32番は、3つの部分からなる8分程度の作品で、実際に交響曲として書かれたのかはわかっていない。モーツァルトの交響曲全集では録音されることが多いが、後期交響曲集になると省かれることが多い。舞台作品の序曲だったという説もある。
モダンスタイルによる演奏。鋭さこそないが、豊穣なモーツァルトを聴くことが出来る。
レヴィの指揮は拍を刻むことが多いオーソドックスなものだ。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲。
スカーレット(ん?)のドレスで登場したヴィヴィアン・ハーグナーは、ミュンヘン生まれのヴァイオリニスト。12歳で国際デビューしている。2013年からはマンハイム音楽・舞台芸術大学の教授職を務めている。
ハーグナーの音であるが、今まで聴いたことのない種類のものである。水も滴るような美音で、表現の幅も広い。どうやってこの音を出しているのかは見ていてもよくわからない。
レヴィ指揮の京都市交響楽団は、金管がばらつく場面があったが、全般的には充実した伴奏を奏でる。
ハーグナーのアンコール演奏は、J・S・バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番よりアダージョ。染みる系の演奏であった。
バルトークの管弦楽のための協奏曲。レヴィが摩天楼型のバランスを取ったこともあり、都会的な演奏となる。
構造表出に長けている、聴き手にも内容把握が容易となり聴きやすい。
民族楽器的な響き、民謡的な旋律と音楽理論の対比が鮮やかに表出され、力強くも華麗な音絵巻を描き上げた。
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