ロレーヌ国立バレエ団 「トリプルビル」@ロームシアター京都サウスホール
2018年9月21日 ロームシアター京都サウスホールにて
午後7時から、ロームシアター京都サウスホールで、ロレーヌ国立バレエ団の「トリプルビル」を観る。「DEVOTED」「STEPTEXT」「SOUNDDANCE」という3つの短編からなる連作。
ロレーヌ国立バレエ団は、フランス・ロレーヌ地域圏ムルト・エ・モゼル県のナンシーに本拠地を置くバレエ団。1980年代にフランス全国19カ所に設けられた国立振付センターの一つであり、劇場と教育機関を併せ持つロレーヌ国立バレエの専属バレエ団である。
正式名称は国立振付センター・ロレーヌ・バレエ団。コンテンポラリー・バレエ作品の制作を中心に据えている。現在の所属ダンサーは26人。2011年7月以降、ピーター・ヤコブソンが芸術監督として指揮を執っている。
「DEVOTED」。セシリア・ペンゴレア&フランソワ・シェニョーの振付である。
緑のレオタードに身を包んだ女性バレリーナ達のダンス。フィリップ・グラスのミニマルミュージック、「Another look at Harmony part Ⅳ」が流れる。パイプオルガンが繰り返され、その後、合唱が加わる。
まずは回転したり足を上げたりと、いかにもクラシックバレエといった感じの振りから入るが、ダンサーの数が徐々に減っていき、ソロダンサー(オオイシ・サキコという日本人のようだ)の舞踊が始まってからコンテンポラリーの要素が加わり、その後も群舞でもクラシックとコンテンポラリーの合わさったダンスが繰り広げられる。
フィギュアスケートでもそうだったが、以前は東洋人は白人に比べてプロポーションの面で大きく見劣りがしていた。だがそれも昔のこと、食習慣の影響もあり、今はそうしたハンディはほとんどない。
一度溶暗してから、3人のダンサーがつま先で立ち続ける中、一人のダンサーが後ろ向きに進むという場面がある。つま先であるため、バランス面でも体力的にもかなりきつそうである。ただそれがその後の踊りの開放感にも繋がっているようである。
「STEPTEXT」。鬼才ウィリアム・フォーサイスの振付。音楽はJ・S・バッハのヴァイオリン・パルティータ第2番より“シャコンヌ”だが、最初のうちは細切れに用いられる。
まず黒い衣装の黒髪の男性ダンサーが舞台下手前方へと歩み出て、円を描くようなダンスを行う。ダンサーが引っ込んでから、今度は黒人系の男性ダンサーが現れて、やはり同じようなダンスをする。
その後、舞台上手から髪を茶色に染めた男性ダンサーと赤い衣装の女性ダンサーが現れて、パ・ド・ドゥを行う。最初に出てきたダンサーと二番目に登場したダンサーをもデュオを行ってたり、別々に踊ったりする。やがて女性ダンサーの相手が次々に入れ代わる。パ・ド・ドゥの時はシャコンヌが鳴り続けて、一段落してソロやデュオが始まると音楽が止まる。
男女の関係性と人生の移ろいを描いているような作品である。
「SOUNDDANCE」。ジョン・ケージのパートナーとしても知られたマース・カニンガムの振付。来年、2019年はカニングハム生誕100年に当たり、来年行われる予定の記念公演でも本作品が取り上げられるという。
舞台上3mぐらいの所から金色のカーテンが降りており、背面を覆っている。中央下に穴があり、そこからダンサーが出入りする。ダンサーはオレンジのシャツを着ており、まずは男性ダンサー一人の踊りでスタートするが、踊り手がどんどん増えていく。
音楽は、デイヴィッド・チューダーの「無題」(1975/1994)。電子音による音楽である。
女性ダンサーが持ち上げられることが多く、アクロバティックな動きも多用される。音そのものを身体によってデッサンしたような作品であり、祝祭生が高い。終盤にはダンサーが一人一人去って行き、最初に登場したダンサーが舞台を後にして幕となる。
終演後にアフタートークがある。出演は、ロームシアター京都の橋本裕介とロレーヌ国立バレエ団芸術監督のピーター・ヤコブソンとリハーサルディレクター&コーディネーターリサーチのトーマス・キャレイ。ピーターとトーマスは英語で話し、千代その子が通訳を務める。
ピーター・ヤコブソンは、「ダイバーシティ(多様性)」を大切にしているそうで、ロレーヌ国立バレエは、クラシックバレエに固執せずにあらゆるジャンルのバレエやダンスに取り組んでおり、またバレリーナやダンサーもクラシックバレエの技術のみを見るのではなく、それぞれの哲学や創造性などを重視して採用を決めるそうである。
またロレーヌ国立バレエは毎年テーマを掲げており、一昨年のテーマは「ラ・バレエ」。フランス語では「ラ」は女性名詞に付く冠詞だそうで、バレエは女性名詞ということになるのだが、本当にそうなのかを問うために女性バレリーナのみによるプログラムを組んだりしたそうだ。その他にも、ダイバーシティとしてあらゆる時代のバレエを一年で取り上げたり、表現のダイバーシティとして、パリのポンピドゥーセンターの前庭で「ディスコフット」という作品を上演したこともあるという。ダンサーがディスコを踊りながらフットボール(サッカー)を行うという作品で、実際にゴールマウスがあり、ボールを蹴り込むと1点が入るのだが、その他にも審判へのアピールも得点要素になるそうである。審判はサッカーの審判ではなく審美眼の持ち主として存在しており、優れたディスコダンスを行うと1点入るという仕組みなのだそうだ。
ピーターもトーマスも今後も様々な作品に取り組みたいと語っていた。
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