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2018年11月26日 (月)

観劇感想精選(272) こまつ座第124回公演「母と暮せば」

2018年11月17日 びわ湖ホール中ホールにて観劇

午後2時から、びわ湖ホール中ホールで、こまつ座第124回公演「母と暮せば」を観る。山田洋次監督の同名映画の舞台化。原案:井上ひさし、作:畑澤聖悟(はたさわ・せいご)、演出:栗山民也。出演:富田靖子、松下洸平。

上演時間約80分の一幕もの二人芝居。舞台転換、休憩共になしである。

1948年8月9日の長崎。助産婦をしている母・伸子(富田靖子)が食事をしていると、亡くなったはずの息子・浩二(松下洸平)が現れる。幽霊と知りながら息子に接する母は、浦上にある官立長崎医科大学に通っていた息子の最期の様子などを知る。実は母は助産婦を辞めていた。その理由を息子に言い当てられ……。

戦争の悲惨さと、原子爆弾の残虐さを照射する作品である。戦争が終わり、長崎にやって来た米兵達は、被爆者を標本としてしか扱わず、自らの行いを虐殺とは思っていない。クリスチャンである信子は、原爆を運命だと受け入れようとするシスター達に反発を覚える。

世界から取り残されつつある母親に寄り添う息子、そして生きることと、生を司る助産婦として命のバトンを受け継ぐことを決意する母親の姿に心温まるものや清々しさを感じるのだが、「その後」を想像するとやりきれない思いも感じる(映画とはラストが異なる)。
長崎で起こったことを風化させないという意思が感じられる物語であり、被害者であるにも関わらず虐げられる被爆者達が、キリシタンの姿と重ね合わされ(親子は「耶蘇はおくんちにも精霊流しにも出るな!」と差別された経験があるそうだ)、人間の業を告発する。
そんな中にあって、母親役の富田靖子の声や雰囲気の温かさに心が和らいだ。

本編上演後にポストパフォーマンストークがある。出演は、こまつ座代表の井上麻矢(井上ひさしの三女)、富田靖子、松下洸平の3人。東京ではアフタートークという名称だったそうでで、松下は「パフォーマンスって、なんか踊ったり歌ったりしなきゃいけないみたい」と言っていた。

松下は琵琶湖を見るのは今回が初めてとなるそうで、大津港に大噴水があり、夜にはライトアップされている姿を見て「シンガポールみたい」と思ったそうである。
富田靖子は、舞台出演が7年ぶりということで、「次に舞台の仕事が来たらどんな舞台でも受けよう」と思っていたそうだ。
実は、前の公演からびわ湖ホール公演まで2週間開いたそうで、母と息子が久しぶりに会うという設定にピッタリだったのだが、松下は気がせいて、登場シーンから一気に語りかけてしまい、今回の上演が今までの最短上演記録となったそうだ。
松下は富田の第一印象について、「話しかけやすそう」と感じたそうだが、富田もそれは自覚しているそうで、よく道を聞かれるらしい。
富田は「母と暮せば」の物語について、「どうぞしっかり受け取って下さい」と観客に訴えかけていた。

 

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