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2018年11月23日 (金)

コンサートの記(454) アレクサンドル・ラザレフ指揮 京都市交響楽団第629回定期演奏会

2018年11月18日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第629回定期演奏会を聴く。今日の指揮者はアレクサンドル・ラザレフ。

若い頃は、「ロシアのカルロス・クライバー」という異名でも知られたアレクサンドル・ラザレフ。モスクワ音楽院を首席で卒業後の1971年にソ連国際指揮者コンクールで1位を獲得。更に翌年のカラヤン指揮者コンクールでも1位に輝き、ゴールドメダルも受章。ボリショイ劇場の首席指揮者兼芸術監督として名声を高めるが、日本でラザレフが高く評価されることになったのはやはり、2008年に日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任してからであろう。日フィルとはロシアの作曲家の交響曲シリーズを立て続けに行って大好評を博し、ラザレフと日フィルは「名コンビ」と謳われた。日フィルの首席指揮者を8年間に渡って務め、現在は同楽団の桂冠指揮者兼音楽顧問となっている。


曲目は、グラズノフのバレエ音楽「四季」全曲とボロディンの交響曲第2番というロシア・プログラム。

今日のコンサートマスターは泉原隆志。フォアシュピーラーに尾﨑平。今日はヴィオラ首席に店村眞積が入る。普段はオーボエ首席の髙山郁子は前後半共に登場するのだが、今回は木管の首席は後半のボロディンのみの登場である。チェレスタ&ピアニーノは佐竹裕介。


プレトークでラザレフは、グラズノフとボロディンについて解説を行う(通訳:小賀明子)。グラズノフはペテルブルク音楽院の教師として多くの後進を育てており、交響曲も8曲作曲(完成したのは7曲)。「四季」はストーリーのないバレエの音楽として委嘱されており、ロシアらしく冬に始まって秋に終わるという順番を辿る。
ロシア五人組の一人として知られるボロディンは、本業は化学者であり、作曲に多くの時間を費やすことは出来なかったが、同い年であるブラームス同様、無駄な音を1音も書かなかったとラザレフは高く評価する。交響曲第2番を「秀作」と断言した。
最後にラザレフは、「これから演奏がありますので帰らないようお願いします」と冗談を言っていた。


グラズノフのバレエ音楽「四季」全曲。慣習的にカットされることが多い場面も今回は全て音に変えて送る。
冒頭からヒンヤリとしてブリリアントな弦楽の響きが耳を引く。ロシア人指揮者は日本のオーケストラと相性が良いことが多いが、ラザレフもやはりその例に漏れないようだ。
力強い金木管の響きと自在に変化する全体の音色による、音の魔術が繰り広げられる。
ラザレフは時に聴衆の方に向き直って指揮するなど、独特の仕草を見せ、視覚面でも人々を別世界へと誘う。
広上のトレーニングにより、日本でも屈指の器用なオーケストラへと変貌した京都市交響楽団。今日もロシア音楽に相応しい響きを出し、ラザレフの指示に応える。

演奏終了後、ラザレフは「もっとオーケストラを称えるように」という仕草を客席に向かってする。


ボロディンの交響曲第2番。
グラズノフの時とは打って変わり、低弦を強調した重厚な響きを京響は奏でる。重戦車の歩みのような迫力であり、エフゲニー・スヴェトラーノフが指揮した時のNHK交響楽団の響きを思い出した。
関西ナンバーワンと断言しても構わない強力な金管群がものを言い、京都コンサートホールを揺るがすかのような巨大な音響が築かれる。これまで国内外のオーケストラの実演には多く接して来たが、ここまでスケールの大きな演奏にはそうそうお目にかかれるものではない。
とはいえ、第3楽章など抒情的な部分の表現力も高く、力で押すだけのタイプではないこともわかる。

ボロディンにしろグラズノフにしろ、余り実演で聴く機会のない曲であるが、十二分に満足させる快演となった。
これまでに接してきた京都市交響楽団の定期演奏会の中でも、今日の出来はかなり上位にランクすると思われる。

演奏終了後、ラザレフはサイド席やポディウム席の聴衆に投げキッスを送り、ガッツポーズも見せたのだが、常に京都市交響楽団の楽団員を先に称える仕草を見せ、気配り上手であることもうかがえた。
「リハーサルが厳格」といわれるラザレフだが、ロシア人指揮者に多い独裁者タイプではないようだ。


 

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