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2018年12月 6日 (木)

観劇感想精選(273) 市村正親主演「炎の人」

2009年7月18日 大阪・京橋のシアターBRAVA!にて観劇

午後5時30分から、大阪・京橋のシアターBRAVA!で、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの生涯を描いた舞台「炎の人」を観る。作:三好十郎、演出:栗山民也。1951年に劇団民藝で初演されて大ヒット。日本におけるゴッホブームを生んだともいわれる名作である。

ゴッホを演じるのは市村正親。出演は他に、益岡徹、荻野目慶子、今井朋彦、原康義、さとうこうじ、渚あき、斎藤直樹、荒木健太朗、野口俊丞、保可南、大鷹明良、中嶋しゅう、銀粉蝶。


ベルギーで宣教師をしていたゴッホ(市村正親)は坑夫達のストライキに荷担して、宣教師の資格を剥奪される。画家になることを志したゴッホはオランダの政治都市ハーグで修業し、パリでゴーガン(益岡徹)やロートレックらと交際。ゴーガンにはその絵を「乱暴だが本物だ」と評価されるが、絵は一枚も売れなかった。弟のテオことテオドール(今井朋彦)の援助を受けながら生活し、アルルでゴーガンと共に暮らすようになるゴッホ。しかし、その精神は徐々に異常を来していく……。

ベルギーの場面ではくすんだ色の背景。それがハーグ、パリ、アルルと舞台が変わる毎に背景色は鮮明さを増していく。

劇場の構造故か演技のスタイルのためかセリフがやや聴き取りにくいところがあり、そのことも含めて観るのに集中力を必要とする作品である。

ゴッホになりきった市村正親の演技は、「見事」の一言。

ゴーガンに画才を認められるも絵は一枚も売れず、それでも憑かれたようにキャンバスに向かい続けるゴッホの姿、そしてゴッホを襲う悲劇に心を動かされる。

絵の世界を舞台とする作品ではあるが、認められないまま続ける時代が長く続くということは他の芸術においても、また純粋に人生においても良くあることである。それでも生き続けようという勇気をこの作品から貰った気がする。

第2幕の冒頭で、ゴッホの絵が映像で大写しになる場面があるのだが、アルルの田園風景の陽光のまぶしさが伝わるような、またアルルの跳ね橋の上にいる女性が今にも動き出しそうな、川に拡がる波紋が更に拡がっていきそうな、そうした絵を観ていると、なぜゴッホが生前認められなかったのか不思議に思えてくる。それは運命なのか、神のいたずらなのか。つまるところ、絵画とはエネルギーを描くものだという発想がその時代にはまだなかったということなのだろうか。

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