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2018年12月21日 (金)

コンサートの記(474) パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団来日演奏会2018西宮

2018年12月15日 西宮北口の兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにて

午後2時から、西宮北口の兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の来日演奏会を聴く。名古屋公演と同一プログラムである。
今日は1階席で聴くことになる。ただ、1階席とはいえ、補助席の前の最後列であり、頭の上に2階席が張り出しているため、音響的には余り良くない場所である。

兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール(兵庫芸文大ホール)でパーヴォ指揮の演奏を聴くのは2度目。前回は、シンシナティ交響楽団の来日演奏会を聴いている。


曲目は、モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」、シューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」

同一演目を聴くということで、ホールの音響の違いがよくわかる。


モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲は、名古屋で聴いたときよりも濃い陰影が感じられたが、愛知県芸術劇場コンサートホールはもともと響きが明るいため、ホールの響きで生まれた印象の違いであろう。もっとも、演奏者もホールの音響に合わせて演奏を微妙に変えるのが普通である。


モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」。独奏者のヒラリー・ハーンは、兵庫芸文大ホールがお気に入りのようで、関西公演時にはここを使うことが多い。

音響の影響もあり、オーケストラのデュナーミク、パースペクティブ共に名古屋の時よりも狭く感じられ、第1楽章の優しい終わり方なども視覚ではわかるのに、音として十分に捉えられない憾みがある。第3楽章でも音が余り飛んでこない。
一方で、ヴァイオリンの響きは良く届く。過ぎていく今この時を愛でては儚むような、日本人の琴線に触れるヴァイオリンである。純度は高く、歌には淀みがない。これぞヴァイオリンの「至芸」である。


アンコール演奏が今日は2曲ある。まず、ヒラリー・ハーンが「バッハのプレリュードです」と日本語で言って演奏開始。自在感溢れる才気煥発のバッハである。
続いて、「バッハのサラバンドです」とやはり日本語で告げてからスタート。今度は精神的な深みを感じさせる「祈り」のようなバッハであった。


シューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」。兵庫芸文大ホールでは、ジャナンドレア・ノセダが兵庫芸術文化センター管弦楽団を指揮した「ザ・グレイト」を聴いたことがある。

残響は短めであるため、ゲネラルパウゼなどには間が感じられるが、全体的に速めのテンポであり、一瀉千里に駆け抜ける。「天国的な長さ」と評される曲であり、演奏によってはしつこさを感じさせるものなのであるが、パーヴォとドイツ・カンマーフィルの演奏は、そうしたものを一切感じさせない爽快感溢れるものである。
速いだけなら味気ないものになってしまうが、パーヴォの抜群のコントロールによって各声部が浮き上がるために楽曲の構造把握が容易になり、発見が多く、新鮮な息吹をこの曲に与えている。
兵庫芸文大ホールの響きは愛知県芸よりも広がりと潤いがないが、その分、スケールが大きく感じ取れたように思う。ただ、細部に関してはステージと私の席との間に目に見えない巨大なカーテンが下りているような感じで、臨場感を欠きがちではあった。悪い音ではないのだが。

同じコンビによる「ザ・グレイト」を2度聴いたことになるが、実演に接した「ザ・グレイト」の中ではパーヴォとドイツ・カンマーフィルのものが総合力で1位になるだろう


アンコール演奏は、シベリウスの「アンダンテ・フェスティーヴォ」。シベリウス・ファンに「好きなシベリウスのアンコール曲」を聞いたら1位になると思われる曲である。どこまでも清澄で優しい「親愛なる声」に接しているかのような演奏であった。



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