コンサートの記(482) 第54回 全同志社メサイア演奏会 山下一史指揮同志社交響楽団ほか
2018年12月24日 京都コンサートホールにて
午後6時から、京都コンサートホールで、第54回全同志社メサイア演奏会を聴く。
ホワイエでは、同志社グリークラブと同志社交響楽団弦楽メンバーによるオープニングコンサートがあった。
ヨーロッパなどでは、クリスマスに演奏されることが慣例となっている、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(ジョージ・フレデリック・ハンデル)の「メサイア」。神の予言とキリストの降誕、キリストの受難と人々の贖罪、キリストの復活と永遠の生命を描いた宗教曲であり、第45曲の「ハレルヤ」コーラスが特に有名な作品である。台本作成は、チャールズ・ジェネキンズ。ヘンデルのイギリス移住後の作品で、英語のテキストが用いられており、初演は1742年にアイルランドのダブリンで慈善演奏会として行われている。
私は、この曲のCDをチャールズ・マッケラス指揮イギリス室内管弦楽団ほかによるEMI盤1枚しか持っていない。全曲を生で聴くのは今回が初めてとなる。
同志社交響楽団は、同志社大学と同志社女子大学の学生を主体としたオーケストラだが、 他大学からの参加、いわゆるインカレも多く、京都大学、京都女子大学、京都学園大学、京都外国語大学、立命館大学、関西学院大学、京都工芸繊維大学の学生もメンバーとして加わっている。コンサートミストレスは同志社女子大学のTさんである。同志社女子大学は音楽専攻があるため、技術的には他大学の学生よりも上なのかも知れない。
同志社グリークラブは、同志社大学の男声合唱団。インカレはいないようで、規定があるのかも知れない。
メサイアシンガーズは、年末の「メサイア」上演のために結成された女性合唱団で、こちらは所属を問わないようである。指導には、同志社女子大学声楽科出身の歌手や音楽トレーナーが中心となって当たっているようだ。
指揮は、千葉交響楽団の音楽監督でもある山下一史。関西で山下指揮の演奏を聴くのはこれがおそらく3度目となるはずである。山下は、関西では、大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の音楽監督として2002年から2008年まで活躍していた。
桐朋学園大学卒業後にベルリン芸術大学に留学。1986年にニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで優勝。晩年のカラヤンのアシスタントとして活動しており、急遽、ジーンズのままベルリン・フィルの本番の指揮台に上がったこともある。現在は東京藝術大学指揮科招聘教授も務めている。
全曲、ノンタクトでの指揮である。
ソプラノ独唱は松下悦子(同志社音楽大学声楽専攻卒)、アルト独奏は渡辺敦子(同志社女子大学音楽科卒)、テノール独唱は小貫岩夫(同志社大学OB。卒業後に大阪音楽大学に進んで首席卒業)、バス独唱は井原秀人(同志社女子大学教授)。
チェンバロは井幡万友美(同志社女子大学チェンバロ専攻卒)、パイプオルガンは大代恵(同志社女子中学校、高校を経てエリザベト音楽大学オルガン専攻卒)。
オーケストラトレーナーは元京都市交響楽団団員の後藤良平。後藤は第1部では第2ヴァイオリンの、第2部と第3部では第1ヴァイオリンのいずれも最後列で演奏に加わる。
合唱トレーナーは伊東恵司。
同志社総長・理事長の八田英二(はった・えいじ)による開会の辞の後で、まず、オーケストラと合唱のみによる「同志社カレッジ・ソング」が演奏され、その後、指揮の山下と独唱4人が登場して、「メサイア」の上演となる。
同志社交響楽団は、学生団体ということもあってややパワー不足だが、曲に相応しい典雅で精緻な演奏を聴かせる。学生オーケストラとしてはかなり上質の団体である。
同志社グリークラブとメサイアシンガーズの歌唱は見事。声のコントロールの行き届いた充実した出来映えであった。京都コンサートホールは残響が長いということもあり、宗教曲の上演にはかなり向いている。毎年8月に京都市交響楽団が宗教曲の演奏を行うことが恒例化した理由の一つでもあるだろう。
山下の強弱を丁寧につけた指揮も素晴らしく、全同志社の恒例行事に相応しい優れた「メサイア」演奏となる。
「ハレルヤ」コーラスは、初演時に王がこの曲の演奏終了後にスタンディングオベーションを行ったという史実にちなみ、聴衆も立ち上がって合唱に参加するのが全同志社メサイアの慣例となっている。ヴォーカルスコアはパンフレットに挟んである。毎年、「ハレルヤ」コーラスに加わるのを楽しみにやって来ていると思われるお年寄りの姿も見られた。
コンサートパンフレットは上質の紙を使った豪華なもの。同志社がこの演奏会に力を入れていることがうかがえる。
「メサイア」演奏終了後に、「きよしこの夜」のキャンドルサービスがある。毎年、恒例のようである。全ての照明が落ち、合唱団とオーケストラ団員全員が電子キャンドルを灯して、「きよしこの夜」を歌い始める。指揮者と独唱者4人もそれに加わり、その後、一人ずつステージを去って行く。ハイドンの「告別」交響曲的趣向である。
最後は、弦楽カルテットが残り、「アーメン」音型が演奏されて終了となった。
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