コンサートの記(490) 尾高忠明指揮大阪フィルハーモニー交響楽団 「ベートーヴェン交響曲全曲演奏会Ⅴ」第九
2018年12月29日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて
午後5時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、尾高忠明指揮大阪フィルハーモニー交響楽団の「ベートーヴェン交響曲全曲演奏会Ⅴ」を聴く。年末の第九が、今年はチクルスの一環を兼ねての演奏となる。
今日は1階席7列6番という席。ステージ上に合唱が乗るためせり出し舞台となり、前5列は潰れたため、前から2列目である。
フェスティバルホールの前の方の席は音が上に行ってしまうため音響は余り良くない。まだ3階席の方が良いくらいである。下手側であるため、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの直接音が強く聞こえ、バランスも悪く、全体としての音像を把握しにくい。更に第1ヴァイオリンの陰に隠れて指揮者である尾高忠明の姿はほとんど見えない。10年前の旧フェスティバルホール最終公演となった大植英次指揮大阪フィルの第九を最前列で聴いた時も丁度こんな感じだった。
今日のコンサートマスターは田野倉雅秋、フォアシュピーラーに須山暢大。
独唱者は、安藤赴美子(ソプラノ)、加納悦子(メゾソプラノ)、福井敬(テノール)、与那城敬(バリトン)。合唱は大阪フィルハーモニー合唱団。
昨年のミュージックアドヴァイザーを経て、今年の4月から大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督となった尾高忠明。カリスマ性のあるタイプではないが、大フィルとの相性はかなり良く、ずっしりとした大フィルの音響に見通しの良さが加わった。
全般を通してテンポは中庸。ところどころ遅くなったり速くなったりでインテンポではないが、大言壮語しない堅実な第九という印象を受ける。ある意味、最もドイツ的なスタイルである。
昨年の尾高指揮の第九では、ホルンが第2楽章のソロを一度もまともに吹けないという惨状を呈していたが、今日もホルンはキークスが多い。元々、音を外しやすい楽器ではあるが、他の楽器が好調だっただけによりいっそう目立つ。
「光輝満つ」といった感じの弦楽と冴え冴えとした木管の響きが印象的な第九である。
第2楽章の緻密なアンサンブルによって浮かび上がる音楽は、あたかも「歓喜の歌」に出てくる天体の動きの描写のように感じられる(実際は、ベートーヴェンは第2楽章を作曲時には、第4楽章には別の音楽を入れる予定だったとされ、直接的な繋がりがあるわけではないと思われる)。壮大な音楽と演奏だ。
バリトンの与那城敬は調子が今一つのようにも感じされたが、独唱者と大フィル合唱団も力強い歌を披露する。
前の方で聴いていると、全曲のラストが天井へと吸い込まれていく音楽のように聞こえる。これは前の方に座った者だけが味わえる興趣だったかも知れない。
尾高と大フィルによる「ベートーヴェン交響曲全曲演奏会」には、第2回の交響曲第3番「英雄」と第4番の演奏会を除く全てに参加したことになる。余り達成感はなし。皆勤だったら違った気分になったのだろうけれど。
今年も恒例の「蛍の光」の合唱がある。指揮は福島章恭。溶暗した中で、指揮者と合唱団がペンライトを手にしての歌である。過ぎゆく月日と平成の時代をしみじみと感じる。
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