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2019年1月31日 (木)

コンサートの記(517) びわ湖ホール オペラへの招待 林光 オペラ「森は生きている」(室内オーケストラ版)2019

2019年1月20日 びわ湖ホール中ホールにて

午後2時から、びわ湖ホール中ホールで林光のオペラ「森は生きている」(室内オーケストラ版)を観る。原作:サムイル・マルシャーク、訳:湯浅芳子、台本・作曲:林光、オーケストレーション:吉川和夫。指揮とピアノは寺嶋陸也(てらしま・りくや)、演奏は大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団(コンサートミストレス:赤松由夏)。美術:増田寿子、衣装:半田悦子。演出:中村敬一。「びわ湖ホール オペラへの招待」として上演されるもの。

開演前に舞台体験コーナーが設けられており、自由に舞台に上がってあちこち見て回ることが出来るようになっている。私も舞台に上がって色々と観察する。


出演は全員、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーで、宮城島康(みやぎしま・こう)、溝越美詩(みぞこし・みう)、森季子(もり・ときこ)、川野貴之、藤村江李奈、船越亜弥、黒田恵美(くろだ・えみ)、熊谷綾乃(くまがい・あやの)、益田早織、栗原未和(くりはら・みわ)、坂東達也、五島真澄(ごとう・ますみ。男性)。


日本を代表する作曲家の一人である林光(1931-2012)。早くから尾高尚忠に師事し、東京芸術大学に進むも、もう学ぶことはなにもなくなってしまっており、早々に中退してプロの作曲家として活躍を始めている。現代音楽とは距離を置き、旋律のクッキリとした明確な作風が特徴である。オペラシアターこんにゃく座の座付き作曲家としても活動しており、「森が生きている」もこんにゃく座のために書かれたものである。


ロシアの児童小説家であるサムイル・マルシャークの戯曲が原作であり、このオペラも舞台はロシアである。

まず月の精霊たちの集いが描かれた後で、少女(黒田恵美)が森に薪を拾いに来たところから話が始まる。この国の女王様(栗原未和)は少女と同じぐらいの年なのだが、聡明ではあるもののやや子供じみており、とてつもなくわがままである。女王様は真冬であるにも関わらず、「籠一杯のマツユキ草が欲しい」と家臣にねだり、家臣がお触れを出すことになる。薪を拾いに来た少女はどうやら母親や姉と血が繋がっていないようで、いつも冷たくされていた。今日も母と姉から「マツユキ草を摘んでくるよう」命令され、持って帰れないと家には入れて貰えないという仕打ちを受ける。母も姉も少女が死んでも構わないという考えのようだ。
当然ながらマツユキ草を見つけることが出来ず、少女は彷徨う。死を意識して怯える少女だったか、遠くに光を見つける。進んでいくと……。


昔からよくある貧しく不幸な少女の成功を描いた童話である。少女のサクセスストーリーであるだけでなく、女王の悟りと改心の物語でもあり、教訓めいてもいるのだが、子どもや若い人のためのオペラ入門としても優れた作品である。
第2幕冒頭に合唱で歌われる「十二月の歌」は、聴衆も一緒になって歌う、ということで開演前にワークショップのようなものがあり、びわ湖ホール声楽アンサンブルとメンバーと聴衆が一緒になって歌う。無料パンフレットの中に「十二月の歌」の楽譜が記されている。


中村敬一の演出は、紗幕に投影される映像を生かしたもので、わかりやすさと共にファンタジックでメルヘンチックな味わいを加えることにも成功していたように思う。

びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーによる歌唱も愛らしく、漫画的なところのあるこのオペラの展開に相応しいものになっていた。

上演終了後に、「十二月の歌」が再度びわ湖ホール声楽アンサンブルと聴衆によって歌われ、雰囲気の良いまま終わる。びわ湖ホールは、「びわ湖ホール オペラへの招待」などを通してオペラファンを着実に増やしているようだ。



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