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2019年2月10日 (日)

観劇感想精選(292) 「ホロヴィッツとの対話」

2013年3月13日 イオン化粧品シアターBRAVA!にて観劇

午後7時から、イオン化粧品シアターBRAVA!で、「ホロヴィッツとの対話」を観る。三谷幸喜:作・演出。出演:渡辺謙、段田安則、和久井映見、高泉淳子。ピアノ演奏:荻野清子。

20世紀最高のピアニストの一人と言われながら、奇行の数々や長期にわたる活動停止、キャンセル魔として、「幻のピアニスト」とも呼ばれたウラディミール・ホロヴィッツ(段田安則)と夫人のワンダ(高泉淳子)、そのピアノ調律師のフランツ・モア(渡辺謙)と妻のエリザベス(和久井映見)による四人芝居である。

1978年のある日、ホロヴィッツはピアノの調律師を務めてくれているフランツ一家の夕食を訪ねることになる。その一夜の物語である。フランツには二人の息子と一人の娘がいるが、息子二人はホロヴィッツの来訪を嫌って他所に行ってしまい、娘のエレンは中耳炎の発作により自室で寝込んでいる。

ホロヴィッツは偏食家で、アルコールは一切受け付けず、エヴィアンしか飲まないのだが、フランツが行った店にはエヴィアンは1本しかなく、仕方が無いので他はボルヴィックにしたという。

ホロヴィッツの妻ワンダは、20世紀前半を代表する大指揮者アルトゥーロ・トスカニーニであり、父の血を継いだのかかなり強気な性格である。

エリザベスはホロヴィッツとワンダに料理を振る舞おうとするのだが、エリザベスが提案したスパゲティをホロヴィッツは嫌がり、ヴェルミチェッリが食べたいという。更にムール貝を嫌う。
ワンダはワンダで、勝手にフランツの家のリビングの模様替えを始めてしまい……。

「今回は笑わせます」と三谷は宣伝していたが、腹を抱えて笑うような場面はなく、小技でちょっとずつ笑わせるというタイプ。基本的にはコメディではあるが内容はシリアスである。

キーパーソンは、舞台上に登場しない、ホロヴィッツとワンダの娘であるソニア。ホロヴィッツを父に、トスカニーニを祖父に持つ彼女は、早くからピアノやヴァイオリンの稽古を始めたが、ものにならず、絵画や詩作へと分野を広げるが、トスカニーニが亡くなったのと同じ年、22歳の時のバイク事故を起こし(バイクで電柱に激突したのだがブレーキを踏んだ形跡はなかったという)、植物人間状態を経て24歳で亡くなっている。偉大な父と祖父を持つ重圧、苦悩が示されている。同時にそうした無言の圧力を娘に掛けたホロヴィッツは「ソニアは私が殺したようなものだ」と言う。

一方で、フランツの三人の子供はその後、幸せな人生を過ごしている。天才の子と凡才の子の対比がここでなされている。

フランツは第二次大戦で兄と弟を亡くしており、死の影が暗く舞台を覆う。その重苦しさを跳ね返すのがフランツの三人の子供であり、ホロヴィッツという得意なキャラクターだ。

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