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2019年3月16日 (土)

観劇感想精選(296) こまつ座第126回公演「イーハトーボの劇列車」2019

2019年3月8日 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて観劇

午後6時30分から、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで、こまつ座第126回公演「イーハトーボの劇列車」を観る。作:井上ひさし、演出:長塚圭史。出演は、松田龍平、山中惇、村岡希美、天野はな、土屋佑壱、松岡依都美(まつおか・いずみ)、宇梶剛士、福田転球、中村まこと、紅甘(ぐあま)、小日向星一(小日向文世の息子)、岡部たかし。音楽:宇野誠一郎、阿部海太郎。

こまつ座の「イーハトーボの劇列車」は、6年前に、井上芳雄の宮沢賢治、鵜山仁の演出で観ているが、今回は松田龍平の宮沢賢治、長塚圭史の演出という組み合わせとなった。

セットは学校の教室。窓が所々破れており、向こうには草っ原が見える。役者が舞台の上手と下手に横一列になり、出番になると教室の中に現れるという趣向を行っている場面もある。

 

松田龍平の宮沢賢治であるが、残念ながら井上芳雄に比べると大きく劣る。トップミュージカルスターである井上芳雄に対し、松田龍平は主に映像で活躍している俳優なので、舞台で差が出てしまうのは当然なのであるが、松田が演じる宮沢賢治はどう見ても利発とは思えない。宮沢賢治という人物は、「素朴なインテリ」もしくは「頭の良い駄目男」という言葉で表すことが出来るのだが、松田は聡明な印象に欠けるため、「素朴な駄目男」に見えるという頭を抱えたくなるような結果になってしまっている。ただ、賢治が考える日蓮像に繋がっているとも考えられ、「これは宮沢賢治ではない」と断定することも出来ないように思う。

今回は、鵜山仁演出版ではカットされていたところも上演されており、上演時間は休憩時間も含めて3時間30分に及ぶという大作となっている。

長塚圭史の演出であるが、真面目すぎてユーモアを欠くところがあるのが気になる。鵜山仁版では笑えていた場所もあっさり通過してしまって意味がなくなっていたりする。ユーモアがあるからそれに対比されるシリアスな場面が痛切さを増すのだが、今回はそうした趣向を炙り出すまでには至っていなかった。

キャストも鵜山仁版の方がずっと充実しており、今回のキャストはセリフのやり取りなどが全般的に今一つ噛み合っていなかったように思うが、宮沢政次郎(賢治の父親)と伊藤儀一郎の二役を演じる山中惇は、特に伊藤儀一郎を演じている時に良い味を出していたように思う。
宮沢とし子(詩「永訣の朝」で知られる賢治の妹)と車掌ネルの二役で出た天野はなも可憐で印象深かった。

思い残し切符も、鵜山仁の演出では希望として描かれていたように感じられたのだが、長塚圭史の演出では「受け継ぐ義務のあるもの」というより切実な意味を伴っていたように感じられ、観劇後の充実感はなかなかのものであった。やはり「イーハトーボの劇列車」は本が良いのだと思われる。

 

こまつ座「イーハトーボの劇列車」2013

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