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2019年3月 4日 (月)

コンサートの記(530) 広上淳一指揮 読売日本交響楽団 読響サマーフェスティバル「三大交響曲」2013

2013年8月21日 池袋の東京芸術劇場コンサートホールにて


東京へ。池袋にある東京芸術劇場コンサートホールで、広上淳一指揮読売日本交響楽団の演奏会を聴くためだ。


今回のコンサートの曲目は、シューベルトの交響曲第7番(旧番号では第8番)「未完成」、ベートーヴェンの交響曲第5番、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」である。


広上の指揮するベートーヴェンの交響曲第5番は、彼が常任指揮者を務める京都市交響楽団の演奏会で二度聴いているが、他の曲目を広上の指揮で聴くのは初めてである。そもそも「未完成」交響曲は生で聴くことをも初めてなのではないだろうか。かつてはクラシックといえばベートーヴェンの第5交響曲とシューベルトの「未完成」交響曲が二大人気曲であったが、現在ではシューベルトの交響曲というと、第8番(旧番号では第9番)「ザ・グレイト」の方がコンサートでは人気である。


 


開演は午後6時30分。


 


京都芸術劇場は京都造形芸術大学内にある私営のホールであるが、東京芸術劇場は東京都の施設である。ということで、やはり都営である東京文化会館と共に東京都交響楽団の本拠地となっている。


音響であるが、東京の音楽専用ホールとしては良い方である。サントリーホールほどではないが、少なくともNHKホールよりはかなり上である(NHKホールも広さを考えれば良く聞こえると思うが「広さを考えれば」である)。今日は前から2列目の席。京都コンサートホールの2列目だと、音が上に行ってしまって直接音が余り届かず、歯がゆい思いをするのだが、東京芸術劇場コンサートホールの場合は音も良い。


 


広上は今日は3曲ともノンタクトで指揮した。京都市交響楽団とのベートーヴェンは指揮棒を振っていたので、ノンタクトによる広上のベートーヴェン交響曲第5番の演奏を聴くのは初めてとなる。


 


シューベルトの交響曲第7番「未完成」。広上は冒頭こそおどろおどろしい雰囲気は作らなかったが、第1楽章は曲が進むにつれてシューベルトの秘められた狂気が露わになっていく。弦楽器群の出す音などは聴いていて胸が苦しくなるほどだ。


夢見るような第2楽章。広上の指揮する読響は実に美しい音色を奏でる。だが、中間部ではやはり聴く者を戦慄させるような迫力があった。


 


ベートーヴェンの交響曲第5番。京都市交響楽団の演奏と比べるとホールの影響もあるだろうが(初めて聴いたのは兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール。二度目は京都コンサートホールである)まろやかな音による演奏であった。極めてドラマティックであり、広上とベートーヴェンの相性の良さが感じられる。


第3楽章から最終楽章までの切れ目なく繋がる場面で、広上さんは右手の肘を下げて、そこから砲丸投げのように上方に上を突き出す。外連味はあるが効果的な指揮法だと思う。


読売日本交響楽団は、最近では、シルヴァン・カンブルラン、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ、下野竜也という、偶然かどうかはわからないが、いずれも渋めの音色を引き出す指揮者にポストを与えており、そのせいか、今日の読響も京響のような燦々とした音色ではないが、最終楽章に突入するところではパッと光が差したかのような神々しい音で広上の指揮に応えた。


 


休憩を挟み、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。


 


広上は序奏こそ平均的なテンポで開始するが(音色はやはり渋めである)、徐々にリタルダンドして行き、展開部に入ることにはかなり遅くなる。だが、管楽器の一斉合奏の所でテンポを上げ、ドラマティックな演奏が展開される。管楽器群であるが、立体的な音を奏でており、オーケストラの力と共に広上の統率力および表現力の巧みさが感じられる。


 


第2楽章は実に抒情的。ノスタルジックな雰囲気を味わうことが出来た。


 


第3楽章は管だけでなく全ての楽器が立体的な音を奏でる。まさに広上マジックである。


そして最終楽章。推進力に富んだ演奏であり、力強いが、金管の咆吼の際も弦楽器などとのバランスは最良に保たれており、力任せの演奏にはなっていない。


これまで、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(ザ・シンフォニーホール)やパーヴォ・ヤルヴィ指揮シンシナティ交響楽団(兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール)による「新世界」交響曲の名演を聴いているが、広上淳一指揮読売日本交響楽団による「新世界」交響曲は、総合力ではそういった猛者をも凌ぎ、実演で聴いた「新世界」の中では文句なしにナンバー1である。

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