コンサートの記(532) 京都コンサートホール「オムロン パイプオルガンコンサートシリーズ」vol.63 “世界のオルガニスト” アレシュ・バールタ
2019年2月23日 京都コンサートホールにて
午後2時から、京都コンサートホールで、「オムロン パイプオルガンコンサートシリーズ」vol.63 “世界のオルガニスト”を聴く。今回のオルガニストは、チェコ出身のアレシュ・バールタ。
チケット料金1000円均一。全席時由ということで人気の「オムロン パイプオルガンコンサート」。ステージ上にリモートコントロール装置を置いて演奏することもあるが、今回はパイプオルガンに直についている鍵盤での演奏である。
ポディウム席は今日は席が取り外してあり、オルガニストに近い2階ステージサイド席が一番人気のようで早々に埋まる。私は今日は1階席の23列目、上手になる29番の席である。
京都コンサートホールに限らないが、1階の前の方の席は音が余り降りて来ない上に、今日はパイプオルガンと演奏家を思いっ切り見上げる形になるため、なかなか埋まらず、開演直前や開演に間に合わなかったお客さんがレシェプショニストに誘導されて前の方の席に向かうという光景が見られた。
アレシュ・バールタは、1960年チェコ生まれ。モラヴィアのブルノ音楽院でヨゼフ・ブルクに師事し、プラハ芸術アカデミーではヴァツラフ・ラバスに師事。1982年のアントン・ブルックナー国際オルガン・コンクールに優勝し、翌年のフランツ・リスト国際オルガン・コンクールで2位入賞、更に1984年の「プラハの春」国際音楽コンクール・オルガン部門で優勝している。スプラフォン、ポニー・キャニオン、オクタヴィア・レコードからCDをリリースしており、高い評価を受けている。
曲目は、前半がJ・S・バッハの名曲集で、「トッカータとフーガ」ニ短調、コラール「目覚めよと呼ぶ声あり」、「前奏曲とフーガ」ト長調、コラール「主よ人の望みの喜びよ」、「トッカータとフーガ」ホ長調。後半が、フランクの「前奏曲、フーガと変奏曲」、ボエルマンのゴシック組曲、リストのバッハの名による前奏曲とフーガ。
アシスタントは池田伊津美(いけだ・いずみ)が務める。
パイプオルガンはストップによる音色の変更が可能だが、今日は比較的優しくて柔らかい音が選ばれていたように思う。
バールタのオルガンは正攻法であり、パイプオルガンの音圧で推すことなく、誠実な演奏を聴かせる。高い音楽性で聴かせるタイプだ。
バッハのオルガン曲はオルガニストなら誰でも演奏する曲だが、バールタは己の技量をひけらかすことなくバッハの曲が持つ魅力を丁寧に提示していく。
後半の楽曲はいずれも初めて耳にするものである。
フランクの「前奏曲、フーガと変奏曲」。ロマン的な旋律と大らかな音色が噛み合った魅力的な曲と演奏である。
ボエルマンは、オルガニストの多くがレパートリーに入れている作曲家である。ゴシック組曲は4曲からなる作品であるが、第1曲である序奏―コラールで輝かしく始まり、様々な表情が紡がれていく。途中で、「ゲゲゲの鬼太郎」を思わせるようなパッセージが顔を覗かせるのが面白い。
ピアノのヴィルトゥオーゾとして知られるフランス・リストであるが、晩年には修道院に入るなど信心深く、オルガン曲や宗教曲も数多く手掛けている。
バッハの名による前奏曲とフーガは、「B→A→C→H」というバッハのファミリーネームに基づく音階で始まる前奏曲とフーガである。今日演奏された他の作曲家の作品に比べて音が多いというのがいかにもリストらしい。
前半と後半とではかなり趣が異なったが面白いコンサートであった。
アンコールは、バッハの「今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ」。いかにもバッハらしい個性に満ちた楽曲であった。
最後は、バールタ自ら京都コンサートホールのパイプオルガンに拍手を送った。
| 固定リンク | 0
« 2346月日(10) ベルトルト・ブレヒト著 大岡淳訳『三文オペラ』(共和国)刊行記念 連続トークイベント「おまへは歌ふな」大阪篇 「私たちは「近代」を卒業できるか? ~歌の生まれるところ~」 | トップページ | ミヒャエル・ギーレン指揮南西ドイツ放送交響楽団 ルイジ・ノーノ 「進むべき道はない、だが進まなければならない……アンドレイ・タルコフスキー」 »
コメント