コンサートの記(536) 創作オペラ「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」2019大阪
2019年3月10日 大阪・大手前のドーンセンター7階ホールにて
午後5時から、大阪・大手前のドーンセンター7階ホールで、創作オペラ「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」を観る。元李氏朝鮮王朝の李垠(り・ぎん)殿下の妃となった李方子(まさこ)の生涯を描いたモノオペラである。
ちなみにドーンセンターのすぐ南には追手門学院小学校と追手門学院大手前中学・高等学校があるのだが、李垠と方子は1940年代に大阪で暮したことがあり、次男である李玖は追手門学院小学校の前身である大阪偕行社附属小学校に通っていたそうである。
企画・構成・台本・主演は、田月仙(チョン・ウォルソン。ソプラノ)。作曲、指揮は孫東勲(Song Donghoon)、台本は木下宣子、演出は新宿梁山泊の金守珍(Kim SuJin)、プロデューサー・総監督は太田慎一。
演奏は、富永峻(ピアノ)とCALAFミュージックアンサンブル(桜田悟、花積亜衣、若狭直人、村山良介)。合唱はCALAFヴォーカルアンサンブル(田中由佳、星野律子、石山陽太郎、相原嵩)。李垠役はバレエダンサーの相沢康平が務める。歌もセリフもなく、李垠の化身としてダンスのみの表現となる(殿下の声:キム・テグワン)。ナレーションは濱中博久。韓国舞踊:金姫玉韓国伝統舞踊研究所。
日本語歌唱、字幕付きでの上演。ステージ後方にスクリーンがあり、そこに映像が投影される。
15歳の時に、日本に留学していた元大韓帝国の皇太子・李垠との婚約を新聞で知った梨本宮方子(田月仙)。完全な政略結婚であり、一方的に婚約を決められた方子は嘆くが、日韓双方の架け橋となるために嫁ぐことを決意する。
韓国併合により李垠は日本の王族となり、皇族に準ずる待遇を得ていた。かつての李王家邸は赤坂プリンスホテル旧館(現・クラシックハウス)となっており、私も前を通ったことがある。
敗戦後、李垠と方子は臣籍降下されることになり、国籍も失う。韓国に帰ろうとする李垠だったが、李承晩の妨害に遭って難航する。その後、朴正熙によって帰国が認められるが、李垠はすでに病身であり、7年後に死去。残された方子は、知的障害児のための学校を興すなどして韓国社会のために尽力。「韓国の母(オモニ)」と呼ばれるようになる。
激動の人生を歩んだ李方子であるが、その障害をモノオペラで描くのはかなり困難であることが予想される。実際、次から次へ休みなく様々なドラマが起こるため、逆に焦点が定まらず、盛りだくさんだが詰め込みすぎてドラマとしての起伏がないという印象も受けた。テレビドラマなどには向いているのだろうが。
感情表現やセリフの用い方にも疑問あり。歌詞に飛躍があるようにも感じられる。
東京音楽大学芸術音楽作曲科出身である孫東勲による音楽は充実しており(婚礼のバレエの場面では、意図的にショパンの「軍隊ポロネーズ」を模した音楽が流れる)、田月仙のドラマティックな歌唱も見事。相沢康平のバレエと金姫玉韓国伝統舞踊研究会による踊りも華やかで良い味を出している。
オペラとして成功作なのかどうかわからないが、李方子という女性には興味を持った。色々と調べてみたくなる。
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