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2019年4月21日 (日)

コンサートの記(549) 飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団特別演奏会「~輝かしい未来への序章~」

2014年1月9日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、ザ・シンフォニーホールで、日本センチュリー交響楽団特別演奏会「~輝かしい未来への序章~」を聴く。指揮は今年4月から日本センチュリー交響楽団の首席指揮者に就任する飯森範親。飯森の事実上のお披露目公演である。

曲目は、和田薫の「チェロのオーケストラのための祷歌(とうか)」(日本初演。チェロ独奏:新倉瞳)、シューマンのチェロ協奏曲(チェロ独奏:新倉瞳)、マーラーの交響曲第1番「巨人」

今シーズンまで日本センチュリー交響楽団の音楽監督を務めていた小泉和裕と同首席客演指揮者であった沼尻竜典は共に任期満了で退任する。二人とも悪い指揮者ではないが、中編成のオーケストラであるセンチュリー響の良さを生かすプログラミングが出来ていなかった。その点、飯森範親はピリオド・アプローチにも長けており、やはり中編成のオーケストラである山形交響楽団の音楽監督も務めているということで期待の出来る人選である。飯森とセンチュリー響は4月にブラームス交響曲チクルスを行い、その後も、マーラーをシリーズで取り上げるほか、いずみホールでは、J・S・バッハ、ハイドン、モーツァルトという「こういう曲をやって欲しかったんだよセンチュリーには」という曲に集中して取り組む。

また沼尻の後任としてアラン・ブリバエフが首席客演指揮者に就任。色彩豊かな作品を取り上げる。

演奏前に飯森範親によるプレトークがある。飯森は「演奏前のプレトークというのは私が山形交響楽団の演奏会前に始めたものでして、今では多くのオーケストラで行われている。私は真似されたわけですが」というユーモア混じりの言葉で語り出し、和田薫の「チェロとオーケストラのための祷歌(とうか)」が日本初演だということで、作曲家の和田薫もステージ上に招いて作品について語って貰う。ケルンのWDR交響楽団(西部ドイツ放送交響楽団、旧・ケルン放送交響楽団)の委嘱により作曲された曲であり、最初は「『五木の子守歌』のように日本情緒溢れる曲を書いて欲しい」という依頼だったというが、チェロの形は女性のボディに似ているということで、憑依した巫女の歌のようなシャーマニズムを意識して作曲したという。世界初演時は男性チェリストだったので、巫女という感じではなかったが、今日は女性奏者である新倉瞳がソリストということで期待しているとのことだった。

新倉瞳について飯森は大学(桐朋学園大学)の後輩で、今はスイスのバーゼルに住んでおり、優れたチェリストだと紹介する。


和田薫の「チェロとオーケストラのための祷歌(とうか)」。「祷歌」とは和田薫の造語である。ソリストの新倉瞳は鮮やかなピンクのドレスで登場。まず新倉が弾く、チェロの緩やかで繰り返される波のような音型でスタート。拍子木が打ち鳴らされるなど、日本的なテイストも十分である。曲調もわかりやすい。二部に入ると今度はチェロが同じ音型を繰り返し、それがチェロとオーケストラに受け継がれてスピード感あるミニマルミュージックとなる。面白い曲であった。


シューマンのチェロ協奏曲。交響曲の時は、ウィリアム・シューマンがいるため、ロベルト・シューマンと必ず書くが、その他の分野ではウィリアム・シューマンは余り活躍していないので、シューマン=ロベルト・シューマンでいいだろう。
チェロ協奏曲の中ではドヴォルザークのものが圧倒的に有名で、演奏されることも多いのだが、シューマンのチェロ協奏曲もそれに次ぐ人気ではある。ただドヴォルザークとシューマンの差は激しい。ドヴォルザークのチェロ協奏曲は演奏プログラムに載ることも多いし、録音も多い。おまけに「エヴァンゲリオン」シリーズで取り上げられており、「ロケみつ」でも毎週のようにチェロによる主旋律が奏でられる。一方で、シューマンのチェロ協奏曲はキャッチーなメロディーには欠ける。

シューマンのチェロ協奏曲は3つの楽章が切れ目なく演奏される。第2楽章はそれなりに魅力的だが、他の楽章はドヴォルザークに比べるとかなり旗色が悪い。比較以前に曲としての力も今一つのような気がする。
新倉瞳は良くも悪くも練られた美しい音を奏でるチェリストである。力強さもあり、今後に期待が持てる。


メインであるマーラーの交響曲第1番「巨人」。中編成のオーケストラである日本センチュリー交響楽団の利点を生かした見通しの良い演奏が展開される。
冒頭の張り詰めた弦の音色から雰囲気満点であり、その後も飯森のオーケストラドライブの巧みさが光る。飯森は盛り上がろうとするオーケストラに左手で「抑えて」という指示を出し、クライマックスに至る前までに力が出すぎてしまうのを避ける。
センチュリー響は弦、管ともに優れている。今日は特にホルンの出来が良かった。
第4楽章でトランペットがちょっともたついたところがあったが、それ以外は万全の合奏力。日本センチュリー交響楽団は大阪のオーケストラの中で間違いなくAクラスに入るオケであることを今日の演奏会でも示した。

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